都内地下鉄合併

猪瀬副知事が九段下駅で一元化をアピールした。半蔵門線と都営新宿線のホームは扉ひとつで隔てられているが、経営が一元化すればすぐに取り払うことができ、乗り換えが便利になるという。東京メトロは行政による保有ではあるが株式会社であり、都営地下鉄地方自治体の一部局である。会社同士ではないので直接は合併できないのだろうが、東京都が新会社を作って交通局の業務を継承した上で合併するのだろうか。あるいは東京メトロが交通局の営業権を買い取るのだろうか。
運賃徴収のシステム上は、合併しなくても九段下駅の壁を取り払うことは可能である。ただ、階段の上り下りがなくなるのは、渋谷方面から来た人が新宿方面に行く場合と、本八幡方面から来た人が押上方面に行く場合のみで、あまり該当者はいないような気がする。また、行きと帰りのどちらかは必ず階段を上り下りする必要がある。
現在も白金高輪、白金台、目黒の3駅は2社局共通駅になっている。ただし運賃計算上はあまり問題になっていない。この3駅は地下鉄路線図上の端に位置する。だから、自動改札機では東京メトロを利用したのか都営地下鉄を利用したのか判定できない区間はこの3駅の間だけを利用した場合のみであるという想定で運賃ルールを作ればよいということになっている*1
このとき、九段下駅の壁を取り払うと、九段下-目黒間の運賃は、東京メトロで計算すべきか、都営地下鉄で計算すべきか、判定できない。東京メトロ経由は190円、都営地下鉄経由は260円である。判定できない区間が3駅以外にも広がってしまう。運賃ルール上は安い東京メトロ経由に統一されるだろう。
利用者にとっては安くなるのはいいことである。でも運賃徴収ができれば実現できるということではない。問題は客から徴収した190円をどのように2社局で山分けするかどうかのルールがないことである。九段下-目黒は、飯田橋乗り換えでも、永田町乗り換えでも、神保町乗り換えでも、市ヶ谷乗り換えでも、大手町乗り換えでも行かれる*2。今の実績で決めることも難しい。料金が安くなれば都営地下鉄を利用したいと思う客が出てくるに違いない。協議は難しいだろう。
ただし、経営体質強化を考えれば、両者局とも合併はしたいのではないか。九段下のみならず、門前仲町青山一丁目、市ヶ谷などの乗り換え改札口は今すぐ撤去できるし、住吉などでは改札口を統合できるのではないか。運賃計算システムなどの設備投資は一元化してコスト削減を図る。運賃体系は今のままでも一元化でもいいが、いずれも安くなる経路が増えるとともに、路線の選択肢が増える。
国土交通省が東京都の累積債務を気にしているのであれば、都営地下鉄の間接部門を丸ごと東京メトロに委託したらよい。交通局の職員もメトロに出向させて都の人件費負担を減らす。ただ、ダイヤ作成や運輸までいきなりメトロ方式に合わせる必要はない。乗り入れ先の京成・京浜急行・京王にとっては今まで通りが一番だろうから、乗務や保線は慌てて一元化しなくてもいいかもしれない。東京都はできるところからやればよい。駅の方面看板をメトロと同じ色調に掛け替えたのは税金の無駄遣いではなかろうか。なぜそんな意味のないことをするのか。

都営は地下鉄だけではない

地下鉄の統合を進めるとすると、都電、都営バスと日暮里舎人ライナーの経営は誰が担うかが問題になる。メトロにとっては一体経営のメリットがなければ譲渡を受けたがらないだろう。交通局のままとなると規模が小さくなり、採算を維持できるのか未知数である。

中間改札

成田スカイアクセスは、成田空港の駅内に中間改札を設けて、京成本線経由の客と成田スカイアクセス経由の客とで運賃を区別するという。やはり会社間で運賃の分け前を機上で決めるのは難しく、実際に区別したがるようだ。猪瀬副知事が九段下の壁を取り払えと言ったら、両社局は「ではホーム上に中間改札を作らないと」と考え始めるかもしれない。

*1:実際は東急などとつながっているから、どの会社の路線を経由したか判定できない区間はいくらでもあるのだが、運賃は最短経路で計算することになっているからルール上は矛盾はない

*2:山手線を含めればもっと経路は増えるが、JRはここでは除く