報道特捜プロジェクト

再びリサイクル特集。「リサイクルは何でも善」という21世紀最大級の誤報汚染が広まる中、まともな番組である。
用意されたビデオの大半はこれまでの放送の総集編のような内容だったが、官僚のコメントが出るまで待つという姿勢だったので新たなネタが足りなかったのだろう。しかし、最後に新たなネタを出した。ようやく国が動き出した。環境大臣に容器リサイクル法の改正を検討させたのは立派である。
次は、リサイクル自体の環境負荷について踏み込んでほしい。本当にリサイクルをすることが資源の節約につながっているのだろうか。名古屋の意味のない分別が、どれだけ街中にトラックを増やしているのか。東京23区のサーマル・リサイクルが理想かどうかはわからないが、名古屋に比べれば合理的だ。
番組での出演者のコメントは「これでようやく納得して分別に協力できる」というイメージを視聴者に与えるものだった。数年後までは焼却や埋め立てがなくならないし、今回の法改正に向けた検討結果がまとまっても、本格的にえせエコ勢力の摘発が行われるのはさらに先のことになるし、法が定着してリサイクルに回されるごみが増えても石油が多く使われるようになるだけである。
わたしは、使い捨て容器がすべて土にかえる物質に置き換わり、容器版コンポスト*1が普及しなければ、この問題は解決しないと思う。生産から流通・小売にかかるのと同じ分だけ輸送燃料を使う容器リサイクルなんてよほどの技術革か流通革命が起こらない限り、無駄が多い。
わたしは、クリーニング屋に使い古しのハンガーを持ち込むことは積極的に行っている。これはリサイクルではなくリユースで、たぶんプラスチックハンガーを使い捨てにはしてないだろうと信じているからだ。何が本当に資源節約に役立つかを考えて行動したいものである。

環境省

報道特捜プロジェクトは正義・反権力の番組で、論調が野党のようだから、今回、国があっさり認めてしまって拍子抜けしてしまったのではないだろうか。
これから国際的な資源獲得競争に勝つには外交や国際経済を交えていっそう国の役割が増していく。ところが、日常のごみ・処理収集の問題だから、と重大な省資源社会政策を自治体に任せてしまった結果が今のえせエコ勢力の氾濫だ。さらに、排出権取引や中国の天然ガス盗み取りなど、日本を標的にした国際的な動きには何も対策が取れていない。
新たな許認可や監視の仕組みを作るのもいいが、省資源の経済行動にインセンティブを与えるような仕組み、そして資源を使った者や捨てた者が払うコストが、焼却予定容器の水洗い(水道水だって石油を使っているのに...)や有料ごみ袋ではなく、環境にいい形で負担できればよい。単純に、リユース包装に補助金を出し、そうではない容器に税金をかければいいだけのことなのだが。
資源確保と省資源はますます重要になるから、資源・エネルギー庁は経済産業省から移管して、生産から廃棄まで一貫して資源を通じた国民生活の安定をどうべきか考える役所が必要である。
今回、まずは自分の誤りを認めたのだから、大きな前進である。鴨下大臣が現職の期間だけで動く可能性は少ないが、ぜひよい役所になってほしい。

*1:家庭が個別に置いてもいいが、稼働する電気がもったいないので、電気が必要なら地域ごとに置かれるのが理想