バルク排除の動き

 Lenovo ThinkPadについて。電源投入時にハードディスクがシステムに対応していないとのエラー・メッセージが出るようになったようである*1
 ThinkPadを造っていたIBMはハードディスクとPC事業を売却してしまったので、純正品よりも若干安価なバルク品を買うにもIBM製ハードディスクを選ぶことができなくなった。今回の機種ではハードディスクがHGST*2製ではなく富士通製だったので富士通バルク品を買って換装したが、換装したディスクでエラーが出る。
 バルク品なのでハードディスクの不具合を想定してあらゆるツールをダウンロードして試してみたが原因が見つからない。
 そこでThinkPad愛好者サイトのThinkPad Clubを見たら、スレッドが折り重なっている(=議論が活発)ではありませんか。どうやら、換装直前に行ったBIOSバージョンアップが原因で、新しいBIOSでは適切な型番とファームウェアの組み合わせのディスク以外はエラー・メッセージを出すようになったとのことである。
 新機種ではハード・ディスクの震動を検知してディスク読み書きを止める機能がついているため、換装品を使われては性能を保証できないということもあるかもしれない。でも、ディスク換装には純正品以外が使えたというのは熟練者にとって常識であった。説明書にもディスク換装を説明する項に「純正品をお使い下さい」とは書かれていない。
 実は、新BIOSでは、過去のThinkPadに装備されていたIBM製やHGST製のディスクもエラーが出た。これは内蔵ディスクは今後使い回しができなくなるということを意味している。
 ノート・パソコンにおいて、ディスクとメモリーは消費者が自由に交換しやすい製品だった。ところがメモリーはしょっちゅう規格が変わるようになったので、新しく買い換えたら古いパソコンで使っていた増設ディスクを使うということができなくなった。ハード・ディスクはIDEの規格自体には変化はないが、事実上再利用や自主交換が難しくなりつつある。このままでは

USBデバイスも純正品以外を排除するようにならないでしょうな。

 ちなみに、なぜ換装が必要なのかということについて説明しておきたい。現在のThinkPadは、万が一OSが起動しなくなったときにデータを復元する機能と、出荷時の状態にファイルを戻す機能の両方が用意されているが、

  • ハードディスクが物理的に故障したらこれらの機能は使えない
  • 機能があると言われても、実際に動くかどうかわからない

と考えた。だから購入時のイメージをそのまま残し、故障時機能をいったん試して使い方を確かめるには、購入直後にリカバリーCDを作成し、ディスクを換装して出荷時の状態への復元を試してみるというのが一番手っ取り早いのである。
 復元機能や戻し機能は、機能があるからといって安心してはいけない。機能を自分で使いこなせるということを確証して初めて生きてくる機能である。パソコンが起動しなくなってからあわてて機能を初体験したところ、結局復旧しなかったということはあってはならない。自分のデータや設定を入れる前に試しておきたい*3

*1:Escキーを押せば問題なく使えるが、たとえば、電源を押してBIOSパスワードを入れた後、しばらく無視していればOSのログイン画面までは自動で処理されるのが通常だが、ひとつ余計な操作が入ってしまうのが煩わしい。また、エラーなのであまり精神的によくない

*2:日立の子会社で、IBMのHDD事業を統合した会社。http://www.hitachigst.com/portal/site/jp/

*3:全く入れない状態では、データが復旧できるか確認できないので2, 3種類のファイルを入れてみることをおすすめする