南海トラフ地震臨時情報を踏まえた、きっぷの払い戻し

2024年8月8日、南海トラフ地震臨時情報が発表された。
一部の鉄道各社は、旅行を取りやめる人を対象に、予約を無手数料で払い戻すとした。

移動は自由

南海トラフ地震は日本列島の広域での被害が想定されていることから、
移動しないことが果たして安全なのかどうかは人それぞれであるし、わからない。

臨時情報が出たからこそ遠方の家族知り合いを思いやって移動しなければならない場合もある。
想定地域から想定地域外への移動も認められるべきである。
想定地域に自力で移動できない人がいたら、想定地域外の人が想定地域にいったん迎えに行かなければならない。

よって、一概に移動をやめればいいというものではない。
払い戻しの手続きが案内されたからといって「こんなときに旅行をするのか」と考えるのは控えるべきである。


東日本大震災のときに、関東地方で液状化などが発生して疎開をする人を見て「放射能を恐れて逃げている」とからかう者がいた。
被災地は東北地方と決めつけて、首都圏でも自宅にガスや水道などのインフラが来ていない家があると想像できなかったようだ。
家に乳児がいたらミルクをあげられない。
遠くに実家があれば、ホテルよりも帰省を考えるだろうに。

インフラが途絶えて自宅を出る人と、放射能が怖い人。
どちらにも移動の自由は認められている。
液状化の被災者を放射脳とたたく自由は認めたくない。


今回は、気象庁の発表に従い、避難先を確認していれば海水浴に行ってもいい。
海水浴客を受け入れるレジャー産業の人たちにも生活がある。
コロナ禍に引き続き自粛宗教が立ち上がらないことを期待したい。

ただ、うーん、まあ、「想定域に船を出してレジャーを満喫します」の類は、
確実な避難路が確保できなければ・・・・・・やめた方がいいかなと思う。
関係ビジネスのみなさん、ごめんなさい。

払い戻しに関する発表内容

さて、

内閣府のWebサイトによると、
南海トラフ地震臨時情報が発表されたら、
1週間は「避難するための準備」を行うものとされ、通常の生活とは異なるとされている。
南海トラフ地震臨時情報が発表されたら! : 防災情報のページ - 内閣府

そこで、無手数料払い戻しの対象も1週間としている。

近鉄

近鉄発表は、以下の通り。

対象となる乗車券類等(未使用に限る)
・往路または復路に8月9日~8月15日の有効期間を含むもの
・乗車券(定期乗車券、回数乗車券を除く)、特別急行券(特別車両券、個室券を含む)、企画乗車券

「往路または復路」となっているのが、ポイントだ。
15日に名古屋から大阪に行き、16日に大阪から名古屋に帰る場合、復路は9日から15日に含まれないが対象であるとしている。

JR各社

一方、JR各社は

8月8日~15日を有効期間に含む

となっている。

旅行を取りやめる場合、行きと帰りを同時にキャンセルすることになる。
16日以降の帰りのきっぷには手数料がかかるのだろうか。
災害が起こる前に将来の予約を払い戻すとしたのは鉄道会社にとって珍しいことだと思われるが、近鉄の対応が妥当ではなかろうか。

ただ、JRが近鉄と異なるのは、営業範囲の広さだ。
行きは飛行機、帰りは新幹線という場合、手元には帰りのきっぷしかない場合もある。
航空会社アプリの搭乗券をスマートフォンで見せながら「持ってきたJRのきっぷは帰りの分だ」と客が主張したとき、駅係員が判断するのは難しい。JR以外のあらゆる会社の乗車券を鑑定できるわけではない。

旅行とは何泊のことをさすのか。
長期滞在で行きは8月10日、帰りは9月1日で、3週間余り別荘に滞在する場合も払い戻すべきなのだろうか。
別荘を持っているくらいなら手数料くらいけちけちするなよという話はさておき、
例えばJRを15日を22日まで伸ばしたとする。
これだと、お盆をずらして夏休みの連泊旅行をしようとした人は救えるけれど、地震とは関係ない払い戻しも無手数料扱いになってしまう。
近鉄方式を参考に、往路と復路のきっぷを同時に窓口に提示した場合に限り、復路も対象とするといった考え方はどうだろうか。

無手数料適用の条件が複雑

JR東日本えきねっとに掲載された記事がこちら。

【8月9日(金) 12時30分更新】
・「えきねっと」できっぷを購入されたお客さまがご旅行を中止する場合、きっぷをお受取りになっていなければ、発車時刻6分前までえきねっとサイトで払戻操作を行うことができます(通常時は所定の手数料がかかります)。
このたびの南海トラフ地震の影響に鑑み、8月9日(金)~15日(木)乗車分の新幹線・特急列車のご予約の内、以下の対象列車を含むご予約について、きっぷをお受取りになっていないお客さまに限り無手数料で予約を取り消すことができます。
※フリーパスタイプの商品は対象外です。
※きっぷとしてお受取りになっている場合はえきねっとサイトで操作はできません。
・また、受け取った紙のきっぷを駅で払い戻しも無手数料となります。
・払戻しに関する詳しいご案内は次ページに記載いたしました。選択肢1より次ページへ進み、注意事項等をご確認の上おこなってください。既にきっぷを受け取った方、JRツアー等の旅行商品を購入された方へのご案内も記載しています。

一部には半角カナも混じっていて、慌てているなあという感じ。

旅行をとりやめる人に一律で無手数料を適用できれば長い説明文を読めなくてもいいのにな、と思った。

  • フリーパスは対象外
  • 対象列車を限定 (当初はJR東日本の路線だけ。のちに東海道新幹線と、JR東日本えきねっとに相乗りしているJR北海道の特急も追加)
  • 往路が15日まででも、復路が15日を超える場合は対象外
  • きっぷをお受け取りになっていないお客さまに限り無手数料
  • 「快速列車や普通列車の指定席のご予約」または「乗車券のみのご予約」をえきねっとサイトで払戻操作した場合は対象外で、払い戻しをする場合は操作の前に駅係員に申し出る

乗車券、特急券普通列車の指定席券はばらばらに発券されるものだ。「ああ、こちらは無料ですが、そちらは対象外でしたね。手数料をいただきます」という感じになるのだろうか。

「きっぷをお受け取りになっていないお客さまに限り」と赤字で強調しておきながら、少し下に「受け取った紙のきっぷを駅で払い戻しも無手数料」とある。
「お受け取りになっていないお客さまに限り」と強調する必要があるのか。
これについては「詳しいご案内」に説明があるので、実害は少ないだろう。

緊急だから、多少の混乱は仕方がない。
ただし、不幸にも次回があったら、しっかり準備して案内してほしい。

きっぷはめんどうくさい

スマートEXやえきねっとで、手元にきっぷがなければ比較的便利に払い戻しを受けられる。
一方で、予約をきっぷに変えてしまうと、駅に行かなければならない。
駅にみどりの窓口がなければ、払い戻しだけのために移動が必要になる。


今回と同じようなことがあったときに復路のきっぷも払い戻しの対象にするのであれば、往復乗車券として購入することが考えられる。
8月14日に出発して、8月17日に帰ってくるとき、東京から新青森に行くのであれば、えきねっとだと2つの予約をすることになる。
14日の新幹線eチケット:東京→新青森
17日の新幹線eチケット:新青森→東京

しかし、17日分は手数料ありとされたらおもしろくない。

往復乗車券にすれば、往路も復路も14日から10日有効のきっぷとして発券される。
特急券は便指定だから、17日になってしまうのは仕方がない。


有効期限をつなげられるというささいなメリットに対して、払い戻しが超絶めんどうくさいというのは大きなデメリットである。
一日も早く、すべてのきっぷが自宅で買えて、自宅で払い戻せるようになってほしい。


ただ、チケットレスにしたところで油断できない。
えきねっとに「列車の運休・システムトラブル時のお取扱い」というページがあるが、長くて読む気がしない。
そして、駅係員がこれを完全に頭に叩き込んで正確に対処してくれる気がしない。
www.eki-net.com