電子署名サービスの課題

電子署名サービスなのにはんこが必要

 はんこに代えて、企業間の契約を電子署名にする動きはあるが、電子署名というのは単なるデータの羅列であって、その有効性を担保するには誰かに電子署名が正当なものであることを認定してもらわなければならない。公証人役場に代わって署名を作る電子鍵(はんこに相当)を提供し、電子署名(印鑑に相当)の正当性を保証するサービスを使わなければならない。
 ただ、そのサービスを契約するときに、なぜか印鑑が必要と言う、どうしょうもない話が存在する。
 電子署名を提供している会社の一部は、お客様のことをはんこでないと信頼できないと言う。
 本人確認は、確認書類を電送できるし、公的個人認証サービスもあるのに、はんこ以外に信頼点を確保できないそうだ。

社判という概念がない場合がある

 電子鍵は個人が管理し、個人が電子署名するものとなっている場合がある。
 はんこの場合は、代表取締役のはんこというものがあって、社長に代わってはんこを押すのが仕事の人がいたりするが、そういうことは許されない。
 A代表の下にいる、B総務担当役員の部下の、押印事務を行っているCさんが、Cさんの電子署名を押さなければならない。
 ところが、契約書の文面にはA代表の名前は出てくるが、零細企業を除いてBさんやCさんは登場しない。Cさんの電子署名があったところで、これは誰なの?と受け手が迷うことになりかねない。
 Cさんが会社をやめてしまうと、Dさんに押印業務を引き継がなければならない。はんこだと、はんこを渡せば引継ぎが終わるが、電子署名の場合はDさんのことを登録しなおさなければならいし、Cさんが今後署名しても無効ということを通知しなければならない。Cさんがこれまで署名した契約書は有効だが、今後署名した場合は無効となるのがややこしい。

電子署名サービスは、取引の相手が使うときには制約がある

 X社とY社が契約するとき、X社が電子署名サービスZ社と契約してY社にも使ってもらうことになる。このとき、Y社とZ社との間に直接の契約関係はない。Y社は電子署名事務を行うときはZ社のITサービスを使うし、電子署名が行われた電子文書をY社がZ社からダウンロードすることはできる。でも、X社とY社との契約が終了してしまうとZ社はY社の要求に従う義務はない。ダウンロードができなくなる場合がある。

電子署名の有効期限

 電子署名は暗号技術で作られているから、やがてコンピューターの性能が上がると偽造できるというリスクがある。
 また、電子署名を検証するサービスを行っている会社が倒産してしまうと、検証を依頼する先がなくなってしまう。
 そもそも、印鑑の方がはるかに偽造しやすいので「だから電子署名はだめ」ということにはならないのだが、署名の長期保存はどうあるべきなのか。

はんこ議連のみなさんは、こういう話をしたらいいのにと思う。

いやあ、伝統芸能の職人さんが作ったはんこはすばらしいんですよ、とか、そういうのはどうでもいいから。