学園祭の禁酒

都内の大学で、学園祭を禁酒にするという。泥酔者発生防止とのこと。
大学当局は禁止の発表をするだけで相当神経を使っているのではないかと想像し、そのご苦労をねぎらいたい気持ちはある。しかし、子供っぽさがぬぐえない。大学等を出て大学に入職してしまうと、こうなってしまうのだろうか。
以下、教職員の皆様の思考を想像しながら、書いてみたい。

(想像ですが)当局の検討結果

なぜ学生の自主的な取り組みにしないのか

学園祭は学生が実行委員会を立ち上げて自主的に取り組むものであるから、禁酒だって学生側から言わせればいい。なにしろ、命にかかわる事態なのであり、人が死んだら来年以降開催できないよ、と学生に言えばいいのである。
でも、誰に言ったらいいかわからないし、学生が自分たちで決められるものだろうか。学生が大人の意見を取り入れたと伝わったら、当局に取り込まれたと左翼系の学生が騒ぎ立てるかもしれない。それであるなら、当局が禁止した方が手っ取り早い。
何かあって対応に追われるのは酔っぱらった張本人ではなく、教職員である。休日に出勤したまま帰れなくなる。
酔っぱらったら退学にしてしまえ、というのもわかるが、学生の将来をたった1日の過ちでつぶすなんて、と批判される。面倒くさい。

なぜ持ち込み禁止なのか

種類はもちろん、ノンアルコール飲料も持ち込み禁止にする。
酔っぱらったのを見つけたら取り締まればいいと言われるかもしれない。しかし、飲んで赤くなる人は処分で、赤くならない人は見逃されるというのは不公平である。「飲むことを強要されました」と弁解されたらどうなるのか。それは本当かもしれない。いじめの被害者を処分してしまうことにもなりかねない。
アルコール検知器を持ち込もうか。いや、人権侵害だと意識ある学生から批判されてしまう。
そんなことで悩むならば、持ち込んだ時点で取り締まればいい。物的証拠があるので取り締まりやすい。
飲んでいる現場に踏み込んでも「これはノンアルコールビールです」と言われたら反論できない。実際に飲んでいるものを取り上げて代わりに飲んでみるわけにもいかない。取り上げようとしたときに地面に落とされたらなめてみるわけにもいかない。であれば、紛らわしい飲料も禁止するしかない。子どもビールはどうなるか、無発酵のぶどうジュースはどうなるのか。まあ、わざわざ禁止に反抗してこどもビールを飲む奴はいないのではないか。

わたしの意見

(想像ですが)当局があれこれ考えたあげく、その結論が「ノンアルコール飲料禁止」にまで達してしまっている。泥酔防止の趣旨から外れ、単に公平に取り締まりたいという目的にすり替わってしまっている。
普段は構内での飲酒が認められているのに泥酔事案が起こりにくいというところにヒントがある。「学園祭なのに酒盛りするしか楽しみがない」というのが根本の問題なのであって、学園祭で行うイベントに対してイノベーションを促すか、変われずに騒ぐだけならやめてしまえば、というのが本質ではないのかなと思う。
バブル後の学生は本当にお金がなく、居酒屋で飲むのも大変だと思う。だからといって、大学構内でバカ騒ぎをしなくてもよかろうと思うし、学園祭でないとできないことって何だろうかと思う。昨年まで先輩方から引き継いできた何かができなくなるというだけだと思う。
ただ、成熟化した教育業界では、教職員の間でも今まで行ってきたイベントをなくすという決断はおろか、言い出すこともはばかられるだろう。その先の昇給や、教職員の地位さえ怪しいかもしれない。学生の自主的な取り組みのはずなのに「同時開催しているオープンキャンパスはどうなるのか」と反発を受けるだろう。
ただ、ディスラプションの波はもうすぐ押し寄せる。変われない大学はなくなる。学園祭に対して「禁酒しておとなしくやってください」程度のことしか言えないようでは先が暗い。