政教分離

宗教弾圧ごっこを興じるマスコミ

 参議院選挙が終わったが、自民党の岩盤支持層を崩せなかったマスコミは、テレビで連日、国会議員と旧統一教会との関係を取り上げている。
 何が問題だとは具体的に言わないし、どうすべきかについても言わない。ただし、霊感商法団体と癒着していて票を集めていることを示唆する映像をテレビは連日流す。特に与党の岩盤支持層が崩れれば何でもいいと思っているのだろう。テレビ的にもおいしい話題だ。森友学園疑惑報道と同じ手法が繰り返されている*1
 政教分離は国によって捉え方が異なる。日本の政教分離は、国が宗教を運営せず、宗教を平等に扱い、憲法の定める信教の自由が保障されていれば要件を満たすというのがわたしの考えである。憲法学者によって要件に関する見解は分かれるところだろうが、宗教団体が支持する政治団体が政党要件を満たし、与党になってもかまわないとされているのが現状である。宗教が関係する新聞が消費税の軽減税率の適用を受けることに対して利益誘導だと批判する報道機関はひとつとしてない。
 信教の自由は、法の下の平等に反しなければ個人にも団体にも認められている。選挙の候補者がどの宗教を信じようと自由ではある。ところが宗教団体の集会に参加したり、宗教団体から祝福を受けたりしたことが執拗な攻撃にさらされている。立候補者が立候補にあたって信仰を公開しなければいけない理由もなく、特に道義的な責任を負わなければいけない場面ではない。宗教団体側にも政治に参加する権利はある。権利がないとするならば法に基づいて公民権を停止すべきである。カルト宗教には適切な法を適用して立件したり、立件できるような法整備をすべきである。
 不特定多数から人気を集めなければならない仕事をしている人に対して、支持を受けるべき相手か確かめろというのは、実務上極めて困難である。温泉宿のように「反社お断り」「入れ墨お断り」と書いておくようなことをすれば許されることなのか。あるいは金融機関のように厳格な反社チェックをする仕組みを政治団体やその支部で構築しないといけないというなのか。どちらも正解ではないだろう。反社チェックの実効性を突き詰めると、運動家に落選運動をさせる手段を与える*2ことになり、かつ、それは特定の団体の収入減を与えることにもなってしまう。さらには、水面下で団体から支持を集める人だけが選挙に受かる仕組みができあがってしまい、ますます民意が反映されなくなる。創価学会公明党の関係は建前上は問題ないということになっているから、既存政党だけが許されるということにもなってしまいかねない。既得権益保護だ。
 団体からの支持を可視化するのも難しい。これも落選運動に使われてしまう。特定候補者に対して勝手に団体が応援する。選挙後に「実はこの団体は応援していたのにその事実を公開しませんでした。だから辞職しろ」と騒ぐ。候補者の政策と、特定団体の主張が一致していたら「この団体から支持を受けている疑いがある」と騒ぐ。
 よって、カルト宗教を含む宗教と政治との接近を問題にするのは難しいのではないかと考える。暴力団と同じように法的に反社会的な存在として定義しないと取り締まりは困難だ。
 自民党青山繁晴議員が言っているような、派閥が宗教票の分配をしている実態を深堀すべきなのであるが、そこはやらないで、末端議員の宗教癒着疑惑ばかり追いかけているのは、単なる揚げ足取りであり、レッテル貼りである。ただ、まとまった票を全国区の特定議員に振り分けるというのは具体的にどうやるのか不思議である。青山氏が「票を分けてください」と言えば、全国数万人の人に「青山しげはると書いてください」と指令を出さなければいけないのだが、それと似たような証拠は残っているのだろうか。自民党候補に入れてくださいという指示は出ていたというのは見かけたが、候補者名の指示はネットでは見たことがない。
 岸防衛大臣の開き直り発言は褒められたものではないが、カルトだからいけないのであって宗教だからいけないという文脈は避けるべきである。カルトだからいけないとなぜストレートに言えないのか。取材が不足していて確証が持てないからである。この人はどうも怪しい。不道徳のにおいがする。じゃあ、とりあえず、お前のかーちゃんでべそって言ってみよう。お前のかーちゃんでべそ、お前のかーちゃんでべそ。あまり上品なやり方ではない。
 マスクだワクチンだ自粛だと煽ることで宗教に目覚めたマスコミ。次の宗教ごっこは何かと言えば、他の宗教の弾圧である。批判の対象を宗教にしてしまうと、信者の結束を高め、ますます過激にする。叩けば弱くなるわけではないので、長期的にはカルト宗教の鍛錬と体力強化を助長しているかもしれない。これについて責任を取る覚悟があるのだろうか。

明朗会計だ

 報道機関は、重要な社会問題を解決する方向に議論を持っていくべきであって、議員の攻撃は些末の話である。何を論じるべきかは説明するまでもないだろう。

  • 宗教か否かにかかわらず、家計を破産に追い込み、家庭を破滅に追い込む寄付取引を一律に禁じる
  • 宗教か否かにかかわらず、一定額以上の高額な寄付に対して、寄付者の生計の安定性を調べたり、問題があった場合の返金に備えて一定期間供託したり、公開したりする仕組みの構築を義務付ける
  • 一定額を超える寄付行為は、寄付金控除を受ける意思がなくても確定申告を義務づけるとともに、宗教法人には確定申告の必要性を寄付者に説明することを義務付ける
  • 寄付のすり抜けとして物品等販売取引を装って寄付規制を回避することを防ぐため、販売行為は宗教法人会計から除外して営利団体を設立し、一般企業と同じように帳簿を作成する
  • 宗教法人の会計を可視化し、寄付金は総額だけではなく、単価×数量、すなわち、ひとりあたりの平均金額とのべ人数を公開させる

信者から寄付を受けるのも大変。お守りを売るのも大変。申し訳ないけれど、こうしてもらうしかない。寄付の可視化は意外と難しいことはわかっている。葬式もお布施も明朗会計。高額のお賽銭は現金持ち込み禁止で、電子マネースマホ決済、銀行振込にして領収書を出さなければならない。これまでのいわゆる賽銭箱の横には人が立っていて、高額投入をしようとする人がいれば「身分証明書持参で高額参拝者受付に並んでください」と叱るようになる。宗教に俗世がかなり介入してしまうが、これを避けているとカルト商法も放置になってしまう。

選挙運動は簡素にしよう

 岸防衛大臣のような保守系候補が、ボランティアを宗教団体から駆り出さなければならない状態は解消しないといけない。電話、はがき、ポスターは、SNSと電子サイネージに移行すべきだと思う。

*1:安倍元首相に対する疑惑が冤罪かどうかについてはここでは紐づけない。同じ手法が使われていると言っているだけ

*2:特定の団体に対して投票を依頼し、投票したことをSNSで拡散させれば簡単に引責辞職に追い込むことができる