万引き犯、顔公開騒動

日本の防衛力*1は、反撃能力があるが使わないとするところに他国に対する抑止力が働いている。もし行使してしまったら実戦経験のなさや、同盟国アメリカの消極的なことが明るみになってしまい、抑止力はなくなってしまう。
きょうは防衛の話ではなくて、万引きビデオ公開取りやめ騒動について。万引きされた店がビデオを公開しようとしたことに対して、同業者から賛同意見が寄せられたという。2014年8月14日の朝日新聞には

寄せられた意見は公開に賛同するものが多く、「小さな店には死活問題。公開は抑止につながる」という同業者もいた。

とある。今や定点カメラが至る所にあり、それらの中には犯罪者の私的制裁を目的としているわけではないが、民間が治安確保のために防犯カメラとして設置しているものも多い。ところが、実際には万引きが横行しているということから、防犯カメラは警察の捜査促進につながっていないようである。公的にも私的にも制裁が少なく、撮影によって電気が無駄遣いされているだけということだ。それならば私的制裁もやむなしとする声が寄せられていると理解したが、

今回については逆だと思う。

定点カメラ・生配信・SNSの3点セットの普及により、いつどこから撮られて暴露されるかもしれない、という漠然とした恐れがこれまであった。それは犯罪者の万引き抑止につながっていた。ところが「撮られたものは公開されないし、今回の有名店のように騒がれない限りは警察も捜査に乗り気ではない」ということが明るみになってしまった以上、「騒がれないものならカメラに撮られてもリスクなし」ということを万引き犯に教えてしまったようなものである。
もし自分が店主であれば、今後は防犯カメラを「防犯カメラではない」と主張するしかない。今回は私的制裁を目的としているとみなされ、「犯人から逆に訴えられるリスク」と「犯罪行為とみなされるリスク」を指摘されている。だから私的制裁と認定されない工夫をする。広告宣伝として、店内の様子を見てもらうことを名目に生配信する。店内の「防犯カメラ動作中」の貼り紙ははがして「店の雰囲気を好きな場所で楽しんでいただくため、店内の様子を配信しています♪」と貼り替える。万引き行為が撮影されたとしてもそこだけ切り取るようなことはしてはいけない。万引き発覚前も後も変わらず、いつものようにアーカイブを置いておくようにする。一方で、万引きは万引きとして、ビデオのことはふれずに発生日時を書いて公表すれば、誰かが勝手に探して掲示板などに拡散する。私的制裁のリスクは匿名のネット住人に負わせるとよい。店は「誰かが配信映像の目的外利用をしたのは残念であるが、万引きしたという事実があるので犯人に同情はしない。それより、早く申し出てほしい」とコメントする。万引き映像の拡散を理由に訴えられたとしたら、全国の定点カメラは即時撤去だ。定点カメラの設置場所で犯罪が起こらない可能性がない場所はない。
わたしは店に悪知恵を授けたいのではない。私的制裁だとして監視社会を牽制するような世論を形成しても無駄で、徐々に監視は強化されるだろう。
そのとき堂々とやると批判が来るのである。そこで、本当に監視したい人間は周りからわからないようにこっそりやるのである。本当に恐いのは私的制裁ではなくて、こっそり行われる監視である。

*1:最近話題の集団的自衛権の話ではない