オンラインの不正対策

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CBT (コンピューター式試験)

 資格試験を受けた。試験形態はテスト会場でコンピューターが貸与されて回答するもので、マークシートよりも手が疲れないし、その場で合否がわかるのが便利だ。試験官を少人数で回せるし、様々なテストを同じ会場で同時に行うことができる。問題文さえ用意できれば受験日時を全員揃えなくてもいいので、大学入試もこれにすればいいのにと思う。
 Covid-19により、自宅での受験が可能になったという。受験会場に行かなくてもいいので、交通機関の乱れを気にして早めに家を出る必要がなく、着いた後に待たされることもない。会場の人数制限がないから、申込可能な受験日時の枠も広がる。自分で受験用のコンピューターを用意する必要があるが、自分が使い慣れたコンピューターで受けることができる。
 便利そうだが、結局試験会場枠を予約することにした。
 最大の理由は、電話、来客、戸外の騒音その他の邪魔を一切排除する自信がなかったことだ。コンピューターはネットにつながなければならないが、新着メール通知が来たらわずらわしい。Windows 11/10の通知はワンタッチで外せるものの、確証がない。試験中に何か機器にトラブルがあったら試験官がいる方が安心である。総合的には便利かもしれないけれど、慣れないものには不安がつきものである。
 オンラインのショッピングや電子申請を使うのは億劫ではないが、誰かに監視してもらいながら使うのは勝手が違う。カメラで見られっぱなしというのもなんだか気になる。会場での試験でも監視カメラが天井についているが、自分で設置したWebカメラで誰かに自宅を覗かれるのは気持ち悪い。
 それでも在宅受験の監視は十分なのだろうか。机を部屋の中央に配置してWebカメラを設置すれば、部屋の半分しかカメラには映らない。画面の向こう側に協力者を立たせておけばいくらでも不正が可能ではないか。そのうち、本物そっくりのアバターは家庭のコンピューターでも作れるようになると思う。パーマン*1コピーロボットの実現は当面無理だが、動画上で動く自分なんてもうすぐなのではと思う。

オンライン投票

 投票率が上がらないのでスマートフォンで簡単に投票が済ませられるようにしましょうという話があるが、オンライン投票での不正監視は今のところ無理だ。
 ネットによる監視社会ができあがっているとは言うものの、思わぬところで思わぬ人が見ているという意味であって、他人が支配している場所を無理やり覗く技術は当面確立しそうにない。
 投票そのものの不正防止技術は十分である。
・本人が投票したことを証明する
・本人以外が投票することができないようにする
・投票した結果を他人が改ざんしないようにする
・投票を二重計上しないようにする
・投票結果が投票箱に届いたことが本人に通知される
・投票結果が壊れないように、または壊されないようにする
・投票した結果を集計した票数を誰かが改ざんしないようにする
・個人が投票した結果を、通信中に他人に見られないようにする
そもそもショッピングや電子申請が可能なのだから、このあたりは問題ないのである。
 しかし、大きな問題が2つある。

時間の制約

 ひとつは選挙は期限があって、投票箱を締めたら速やかに結果を確定しなければならないということである。ショッピングの場合はうまくいかなければ苦情を言えるし、一定期間の返品交換が可能だが、投票の場合は異議を唱えてもその時は当選者の万歳三唱が終わっているかもしれない。ただし、紙と投票所による投票でも完全に事故が防げるわけではないので、個人単位での不具合が国政選挙で起きても当落の大勢には影響がない。それならレアなケースは選挙後に裁判でやればいいかもしれない。

不正監視

 もうひとつが、不正監視である。
 確実に本人が投票していて、本人以外が投票していなくて、投票結果が正確で、本人に通知が届く。ここまでできれば完璧なように見えるが、大きな落とし穴がある。ここでいう本人は生身の人間である。本人は本当に他者の影響を受けずに投票できるだろうか。
投票日前の選挙運動は、まさに他者に影響を与える活動であって、あの人ではなくて私に投票してください、あの党ではなくてこちらの党へという呼びかけがネットを含めて行われる。それは問題がない。同時に期日前投票が行われているが、直前にどんな影響を受けようが、いったん投票所に行ったら立会人が見ている場所で誰にも心理的肉体的拘束を受けずに、かつ秘密が保たれた状態で投票を行うことができる。
人を誘拐して、家族に対して「返してほしければ○○党に投票してこい」と脅すのは割に合わない。犯人は投票所に行ったところまでは確認できるかもしれないが、実際に投票したかどうかはわからないし、それで得られる票はたった1票である。
 これをオンラインにしたらどうなるか。
 お得なイベントでも人気アーティストのイベントでもいいので、人を集める。最近はオンラインでも集客ができる。実際の選挙では老人ホームを回るそうだが、それでもいい。そこで、せっかくだからこの場で投票しちゃおうよと呼びかける。周りの人の行動に流される人も出てくるかもしれない。「投票の直前に、候補者を選択した画面を見せてくれ」とやるかもしれない。選挙運動は投票行為と一体にしてはいけないのである。スマートフォンの中にいくらセキュリティ対策を仕掛けても、スマートフォンの外は無防備である。そして、いくらコンピューターの技術が進んでも人の心は無防備である。
 どんなに啓発しても特殊詐欺はなくならない。被害者は自分が被害にあったことに気づかない。
投票の直前くらい、自分の意思を自分に確認する時間が必要である。それを誰かが見てあげなければならない。
 オンラインでやるなら不正対策をしなければいけない。
 先に書いたコンピューター式試験のように監視員をつけようか。ただし、住民全員が対象だと混雑する時間ができてしまうのでコールセンターのような受付待ち状態になる。受付待ちをするくらいなら近所の投票所に行った方が便利で、普及しないかもしれない。
有権者がコンピューターを用意する手間や、コンピューターシステム障害が起こらないようにすることは些末な問題なのである。

解決方法はないか

 何度投票してもよいことにする。あとで騙されたと気づいた人がいても投票箱を締めるまでやり直しができるようにする。人々は締切直前だけ警戒すればいい。ただ、コンピューター側の防御が大変だ。締切直前に投票が集中する。やり直しができればさらに駆け込みが来る。再投票の人には理由を入力させるなどして、いたずらで投票を繰り返させないようにするとともに、新規投票の人を優先的に受け付けて投票機会の平等を確保することだ。
 理想なのは、不正を企ている人が投票する人を特定しにくくすることである。参議院は議員が半分改選されるが、選挙の数を倍にして投票者を変えていく。投票はたくさん行われるが、投票者にとっては順番が回ってこないと投票できない。
 テレビが世論調査をやっているが、世論調査をやる感覚(間隔)でどんどん改選されていく。もう世論調査はいらない。最新の投票結果が常に見える。
 投票所を残す前提だと難しいが、不正をやり続けるにはお金がかかって割に合わないと思ってもらう必要があるのである。今と比べて民主主義を守るコストが上がると理解を得られないので、導入には慎重にならざるを得ない。
 ただ、選挙管理委員会による選挙事務費ではなく、社会全体のコストは下がるかもしれない。
 衆議院議員は常在戦場というそうだが、しょっちゅう選挙が行われるので、選挙事務所やらはがきやら街頭演説やらというのは効率が悪いのでネットに移行する。選挙買収も何を買収するものかよくわからなくなるのでなくなる。
会派なるものをしょっちゅう組み直したら手間だし、議場の席順もあいうえお順でよくないですか、となる。半年前に落選したけれど、すぐに復活とかもあるかもしれない。
 結構悪くないと思うんですけどね。任期を変えるには憲法と法律を変えなければいけないというのが絶望的である。

*1:藤子不二雄の漫画