人の話は人を見て聞くものだ

 最近のプレゼンテーションは、プレゼンテーション・ソフトというものであらかじめ絵を作って行われることが多い。
 しかし、どうもあの画像・映像が理解の妨げになっているような気がする。
 テレビドラマと単行本の小説とで楽しみ方が違うように、人間にとって見るのと聞くのは脳の違うところを使って行うように思う。これを同時にさせようとするわけである。絵と声は同時進行で、同じ話題を取り扱っているはずなのだが、実際は脳には違うことをやらせているわけで、片方がおろそかになる。
 講演者の方を向いて話を聞いていれば、画面に出ている資料の理解はほとんどできないし、資料ばかり見ていれば、講演者がどこを強調したいのかなんて理解していない。
 視覚に訴えるのと聴覚に訴えるのはそれぞれ得手不得手があるから、講演時間の中でうまく使い分ければいい。ところが、講演者はそれが理解できていない。
 先日、久しぶりにホワイトボードで講義を受けた。文字は、話しながら書かれていくから、当然ながら
・話し手の近くで*1
・話に合わせて
・必要最低限のキーワードが
出てくる仕組みになっている。この3要素を兼ねそろえるのは、プレゼンテーションソフトではまだまだ無理なのである。それを勘違いして、たとえば動画やアニメーションで凝ったつくりをしてみようとするのだが、話している人が視界に入らない状態で文字や絵が動いても無駄なのである。
 テレビ番組で、映像の中に人が入ったり、人のすぐ下に大きなテロップが出るが、あれを実現する必要がある。

*1:目を動かさなくても、話し手の顔や手振り、そして文字がすべて同時に見えるということ