東京スピードにけちをつけたので、速度の話をしたいと思う。
速度には、表定速度*1や平均速度といった指標があるが、これは鉄道事業者側から見た指標であり、旅行者から見たら実際は乗車の際に乗り物を待つ時間などが発生するはずである。2km先の隣駅に行くにも運転間隔が30分だったらとても時間がかかるし、駅からとても遠い所に行くときには、タクシーを待たずに歩くか、タクシーを待つかを考えるだろう。よって、修正表定速度をここに提案する。
乗車附随時間 = 構内移動時間 + 乗り換え時間 + 乗車機会間隔 × 0.5 修正表定速度 = 移動する道程 ÷ (乗り物の走行時間+停車時間+乗車附随時間)
構内移動時間は、電車だったら駅の入り口から改札を通ってホームに着くまでと、電車を降りてから改札を通って駅の敷地から出るまでの移動時間*2の和とする。駅によるし、切符を買う時間も考慮すべきという議論もあるだろうが、ふつうは2分くらいだろうか。地下鉄だと5分から10分以上かかることもあるだろう。飛行機ならば1時間〜30時間*3となるだろうか。乗車機会間隔は、電車だったら運転間隔である。ホームについてすぐに電車が来ることもあるし、電車が出た直後ということもあるだろうから、間をとって2で割ることにする。
東京駅起点のとき、構内移動時間は4分と仮定する*4。
中央線快速だと、東京駅12:10発の高尾行は、53.1kmを58分で運行している。高尾行はだいたい10分間隔くらいであるから乗車附随時間は9分。修正表定速度は50km/h弱である*5。
東海道線だと、東京駅12:03発の普通熱海行は、104.6kmを115分で運行している。修正表定速度はやはり50km/h弱である。
武蔵野線快速だと、東京駅12:21発の快速府中本町行は、西船橋までの24.1kmを25分で運行している。表定速度は約58km/hと優秀であるが、乗車附随時間を40分とすると昼間の修正表定速度は約22.2km/h。どうりで地下鉄東西線*6との競合に勝てないはずである。
一方、丸ノ内線で新宿に行くとどうか。東京駅平日12:03発の荻窪行は、7.9kmを19分で運行している。運転間隔は4分と優秀であるが、修正表定速度は20km/hに届かない。
快速や中電と比べるのはかわいそうなので各駅停車と比較するのがよいと思ったが、山手線でも30km/h前後あるようだ。やはり地下鉄は遅い。
東京スピードでとりあげている日比谷線や千代田線だと、
日比谷線 北千住→日比谷 22.0km/h*7 千代田線 北千住→日比谷 24.2km/h*8
ぜんぜん速くない。多摩都市モノレールの表定速度より遅い。たぶん、原付バイクの方が速い*9。
路面電車と比べてみよう。早稲田駅平日12:04発の都電荒川線三ノ輪橋行は、12.2kmを53分で走る。構内移動時間がほぼ0〜1分未満なのが有利だが、乗車附随時間約3分でも13km/hをわずかに上回る程度。地下鉄は路面電車よりは速いことがわかったが、自動車に遠慮しながら走る路線と比較して勝ってもあまりうれしくはなかろう。
修正表定速度をもっとよりよい指標にするには、移動する道程を「地図上の直線距離」に変えることである。営業キロの類は、鉄道事業者が勝手に設定するものであり、旅行者にとって意味があるのは結果としてどこまで運んでもらえたかである。比較的遠回りをすることがない東海道線や中央線に比べると、丸ノ内線、日比谷線、山手線、都電は不利である。極端な例として、試しに東京→有楽町を東京→田端→大崎→有楽町の内回りで計算したり、新宿→市ケ谷を直線的に動く都営新宿線と大回りする中央線各駅停車で比較するとわかりやすいだろう。
次回は自動車についても考察する。
*1:http://www.mintetsu.or.jp/dictionary/ha/141.html
*2:地方の鉄道で、改札開始を待つ必要がある場合はそれは乗車機会間隔に含め、ここでは計算に含めない
*3:国際便に乗るために地方からの国内線乗り継ぎに加え前泊・後泊した場合
*4:厳密には改札口とホームの設定によってかなり差があるが、きりがないので統一しておく
*5:蛇足だが、この電車は特別快速ではないので、乗り換えを考慮しても新宿から京王線に乗ったほうが速く着く。
*6:大手町→西船橋の表定速度は約40km/h。昼間の修正表定速度は約35km/h
*7:12.1km 所要時間26分、附随時間7分と仮定。
*8:11.3km 所要時間20分、附随時間8分と仮定。
*9:30km/hの速度制限を守っていたら地下鉄のほうが速い