銀行の手数料ビジネス

 昨年から今年初めにかけて、クレジットカード会社から会員規約変更のお知らせがしばしば届いた。個人情報保護法成立が影響しているのだろう。
 2004年は、銀行等からサービス改悪の通知が届くようになった。「**サービスは終了しますが、有料で別途サービスを用意しています」「休日の商品取り扱いは縮小します」「情報システムを他行と統合するので、独自のサービスはできなくなります」などが複数の金融機関から送られてきた。
 金融ビッグバンという政策の効果は「庶民から手数料を取ることにする」「金融機関の数を減らして競争を減らす」ということに集約されるようだ。ああ、結論を先に書いてしまった。郵便局が郵貯銀行になったら、庶民の金融機関はひとつもなくなるのだろう。
 さて、ある銀行から届いた通知を要約すると、あるサービスや手数料を「下表の通り変更します」ということのようだが、どうして変わるのかを具体的に書いていない。サービスが向上するときには、カラーのパンフレットを作成したり、変更の特長を箇条書きにしたり、新サービスを利用することによる効果の試算などを例示して大々的に宣伝するのに、何も説明がない。新旧比較を表にした上で、太字にして網掛けにしたから、違いは読み取ってくれということのようである。
 公共料金が値上げされるときは、わざわざ理由を説明してくれるだろう*1。なぜ「変更します」ですませるのか。例えば、改訂前が0円で、改訂後が105円と書いてあれば、違いはわかるはずだろうと思う人は常識人だし、ほとんどの人がさらっと読み飛ばすのだろうが、「わたしには読解力がないからわかりません」と言っているわけではない。値上げの説明とは、事実だけ示せばいいのだろうか*2。そして最後には「何卒ご理解いただけますよう」とある。説明してから了承を求めるべきだ。説明が必要なのはプロ野球球団合併問題と同じ。「ディテールはコストがかかる。あまり来ないでほしい」あるいは「手数料で稼ぎたいので、庶民の口座を増やしてみました。外貨預金金利12%など、実は顧客は大して儲からないのに宣伝を刺激的にしてみたら顧客は集まったので、そろそろ次のステージに進もうと思います」と素直に書いたらどうだ*3
 例えば、別のサービスによって、手数料値上げを和らげる方法がさらっと書いてあるのだが、もう少し詳しく書いたらどうだろうか。 
 わたしは、郵便貯金とすべてのメガバンクに口座を作った。都市銀行の会員サービスはぎりぎり特典が受けられるように、わずかな預金を細かく分配させてある。有利でもない積立預金を行ったりなど、様々な努力を行っている。その結果、24時間365日、かなりの銀行ATM及びコンビニATMでは手数料がかからない。大都市圏ならば、少し探せば無料ですませることができる。ただし、振込手数料は安くすませるのが難しくなっている。
 現在の借家を契約するにあたって、関係書類を読んだところ、家賃の支払いが三井住友銀行へ振込となっていた。そこで、三井住友銀行のWebページを読んで研究した。
 契約日、口座番号を知ったわたしは、不動産屋の支店を出たその足で電車に揺られて30分、三井住友銀行の支店に向かった。不動産業者の口座と同じ支店である。旧さくら銀行の口座はすでに持っていたが、旧住友銀行の支店だったのでその当時は*4取引店変更ができなかった。そのときの家賃に関しては、不動産屋が口座振替の手続を行ってくれたが、途中からみずほ銀行が手数料を取ると通知してきた。引っ越すときに、再び手数料を減らしたいと思っていた。
 窓口で銀行員と向かい合ってから忘れ物に気づいた。賃借契約に使ったから印鑑は持っているが、マネー・ロンダリング対策に行われている本人確認*5用の証明書がないのである。キャッシュ・カードは自宅配送であるし、あとで住所変更をするのは面倒なので、口座開設申込書には新住所を書かなければならないが、新住所が書かれた身分証明書は未だに存在しないのである*6。あとで申し込めるように郵送可能な申込書を受け取って帰宅した。
 往復の電車賃で手数料数箇月分を使ってしまったが、近所でも入手できる申込書を使って口座を開設した。開設支店は申込書記入時に選べるが、電車で行った遠い支店にした。なぜ不動産業者と同一支店にしたのか。
 以前、某証券会社のオンラインサービスに入ったときは、証券会社に振り込むときの指定口座が某銀行本店営業部だった。わたしは迷わず本店に銀行口座を開設した。ただし、それはWebや電話から振込を行うときに手数料が無料になるだけである。
 Webには詳しい解説が載っていないが、三井住友銀行の定額自動送金<きちんと振込>を利用すると、同一店内宛の振込を毎月自動で行うことができ、しかもそれが無料なのである。例えば東京三菱銀行ではMAIN BANK ステージ5(300万円以上の運用残高など)が無料の条件なので、有利である。
 後日、駐車場の契約をしたときには、自動振込ではなく、自動振替だった。不動産屋の指示で、振替元口座*7が、振替先支店と同一であることを強制されたのに手数料がかかるという。駐車場の契約をした別の不動産屋に「家の方は手数料が無料なんですけどねぇ」嫌みを言ったら「そういうサービスがあるのですか? どこですか?」と聞かれた*8
 いいサービスを見つけたのに、突然来た手紙には、2004年10月1日から315円(3万円以上)かかるとある。しかも隅っこに

別途お取扱手段として、お振込の都度105円(消費税込)がかかります。*9

毎月、420円取るのですか!
 三井住友はキャッシュカードの同一支店内ATM振込なども有料化するようである。
 たまたま自分が利用しているサービスが有料化しただけなので、三井住友銀行のすべてが悪いというわけではないけれど、銀行に毎年5,000円も払う気はない。どうしたらよいものか。

せっかく手数料を払うのなら、クレジット・カード払いを認めてくれ。

カード会社よ、賃借人が限度額の高いカードを持っていそうな高級賃貸マンションならば検討できないか*10。ゴールドカードの特典として、不動産業者=加盟店が負担する手数料は極力抑えるとか。ただ、ポイントも毎年百万単位の利用相当分が加算されるから、体力が続かないかも。
 最後に、銀行の手数料ビジネス、当分の焦点は以下の通り。

  • 三井住友銀行の自支店宛無料廃止に対して、他行が追随するかどうか。
  • UFJ銀行は、統合によって現在のディテール重視のサービスを維持できるかどうか。
  • 会員サービスによるATM時間外手数料無料を撤廃する銀行があらわれるかどうか。

*1:納得させてくれるかどうかは別として

*2:Webには少し説明があるが、もらった手紙にはない

*3:大銀行対庶民の構図を作りたいわけではないが

*4:今はどうなのか?

*5:金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律。等ばっかり

*6:まだ旧住所に住んでいるから

*7:つまり、わたしが駐車場契約にあたって強制的に作らされた口座

*8:今想えば、不動産屋の人はどこの不動産屋と契約しているのかを聞きたかったのだろうが、銀行の名前を答えてきた。

*9:もらった手紙には「別途お取扱手数料として、」と書いてありわかりやすいが、Webに書いてあるのは上記の通り。「として」は、近くにある語句を同格にするから、「手段=105円」→「105円がかかる=手段がかかる」ということか? 円はお金の単位だが、いつから手段の単位になったのだ? ちょっと日本語が変。文法論はここまでにしておいて、額としては52円のところもあれば210円のところもあったりするので、客観的に考えれば標準的である。でも許せない

*10:なお、わたしの家は高級ではない