タッチでGo!新幹線

JR東日本が2018年4月1日から、交通系ICカードで首都圏を中心に新幹線自由席に乗れるサービスを開始します。
新しいサービスの開発意欲は高く評価しますが、Suicaのシステムには限界があるなと改めて思いました。

東京から仙台に行けない

松本まで東京近郊区間にするなど、JR東日本は首都圏エリアを無理矢理拡張してきました。ただし、もともと存在していた区間を廃止するには至らず、Suicaのエリアをまたぐことができません。その結果、今回のサービスで特に需要がありそうな東京-仙台、大宮-仙台がサービスされません。
東京-上毛高原間はいいのに、東京-仙台がだめというのは、上毛高原駅の利用者には失礼ですが優先順位が違うと感じます。しかしシステム上難しいのですから仕方がありません。
同様に、東京-軽井沢にもサービス範囲外です。

なぜか登録が必要

券売機等でSuicaを登録する必要があるそうです。初回のみでよいそうですが、そもそもなぜ必要なのかが理解できません。全国ICカードを利用可能にするためでしょうか。しかし自社発行のモバイルSuicaは携帯電話の機種交換のたびに登録が必要なのだそうです。
破損で交換する場合は登録が継続されるそうです。しかし、オートチャージなどの設定は引き継がれないと理解しています。何が登録継続で何が登録継続でないのか、みどりの窓口の係員は説明できるでしょうか。過去に定期券の券面がかすれてしまったときに係員から

作り替えをお勧めしますが、何やら登録されている場合は引き継げないのでご注意ください。

と言われたことがあります。

何やらって何だよ、言ってみろよ。

と思いました。
SuicaポイントクラブJREポイントはようやく統合に向かおうとしていますが、新たに登録システムを作ってしまいました。繰り返しますが、このカードは新幹線自由席OK、このカードは自由席NGを識別しなければならない理由がよくわかりません。
モバイルSuicaの利用者のほとんどは券売機に並ぶ行為から開放されたはずです。街中にある公衆電話の場所を知らないのと同様に、券売機を探すという習慣が既にありません。しかし台数が少ない「チャージ専用機」というものを探さなければなりません。多くの駅でみどりの窓口を廃止し、券売機も2台くらいしか置いていないきっぷ売り場がありますが、チャージ専用機はどこにあるのでしょうか。
そもそも多機能券売機では、モバイルSuica利用者が使うことは想定されず、ICカードしか読み取れません。そこでモバイル機器のFelicaでも押し当てられるチャージ専用機なるものが登場しましたのですが、今回のサービスを始めるなら多機能券売の開発者は当初からICカード以外の読み取りにも対応すべきでした。ちなみに、東京周辺のライナー券販売機もようやく交通系ICカードに対応する機種が主流となりつつありますが、モバイルSuicaの残高は使うことができません。ロマンスカーのように携帯電話で買える方がうれしいです。
JR東日本管内で新駅を作ると百億円以上かかるといわれていますが、そのうち10億円はSuicaPASMOの対応費用だそうです。駅に掲示してある運賃表も枚数は多いものの、基本はシールを貼るだけです。ところがプログラムはそうはいきません。一駅増えるだけで、SuicaPASMOの全駅との運賃の組み合わせを見直さなければならないし、加盟全社でプログラムを書き換えなければいけないので大変だろうとは思いますが、データ変更だけで10億円というのは結構なシステム投資です。小田栄駅はこの投資を回避し、システム上は未だに存在しない駅として知られています。隣駅と同じ扱いになっているため、隣駅までICカードで乗車するとエラーになってしまいます。
一駅で10億円であれば、東京近郊区間仙台市内をつなげるのはもっと大変なのでしょう。JR東日本JR東海は未だに熱海を経由する東海道線の会社間乗り越しにも対応できていません。これも同様の理由と考えられます。
これからも便利な機能を追加するには、鉄道系ICカードのシステムを造り直す時が来たのではないかと思います。全国でICカードを相互運用しているので、Suicaとして使う場合は新規格、そうでない場合は現行規格を使い分けるハイブリッドにするしかなかろうと思います。そして今後出てくるJR東日本の新サービスはハイブリッドカードのみ対応とすることになるでしょう。NTTがICカードテレホンカードで失敗し、磁気のテレホンカードに戻した事例がありますが、電子マネーを使ったときに自動販売機と物販しか購買履歴を識別できない現行よりは遥かにデータの利用価値が上がり、新規格への投資は回収できるのではないでしょうか。新規格を機に暗号通貨を発行するのもおもしろそうです。
かつて、銀行の支店変更をしようとしたら窓口で30分待たされたことがありました。なぜ時間がかかったのか聞いたら、「あなたの口座に紐付いているサービスが多すぎた」とおっしゃいます。口座振替やポイントサービスのことだったのでしょうか。預金の種類ごとに支店番号+口座番号を用いたIDを振ってしまっているから、支店変更に伴ってすべてのサービスでIDの書き換えが発生するのです。ネット銀行は支店が土地と紐付いていない上、同一支店内と支店間で振込手数料が異なるといった運用がないので、誰も支店変更をする必要がありません。伝統的な銀行より新しい銀行の方が余計なルールがないだけ低コストでシステム運用することができます。勧められたから口座引き落としにしたのに今度は多すぎたと言われたので、公共料金引き落としの申込書をクレジットカード会社に提出しました。
 余計なルールがないというのは重要なことで、JRに話を戻すと、複雑なルールはやめればいいのです。特定都区市内というルールは今でも必要でしょうか。SuicaPASMO対応の改札が何駅のデータを扱えるのかはわかりませんが、200kmを超えたらたとえ新宿から乗っても東京から乗ったとみなすという運賃計算は廃止してもよいのではないでしょうか。それだけで解決するわけではないことはわからなくはないですが、東京-仙台くらいはSuicaだけで乗れるようにできないものでしょうか。
 FinTechや仮想通貨の時代において、伝統的な銀行や、Suica電子マネーは、レガシーと言われる時代になってしまいました。Suicaはますます複雑になっていくのでしょうか。