機能が減っている

(諸事情のため、一部を加工して書きます。自社のサイトだとわかっても、クレームは受けません。)

 とある顧客向け情報システムでなんだかなあと思った話です。
 聞いた話によると、事務所に葉書が来たので読んでみたところ、新しいお客様情報サイトのID・パスワードが書かれていたそうです。お客様情報サイトの旧システムは使っていたのですが、お客様の契約の場合は新しいシステムに移行しないでください、と言われていたそうです。
 ようやく古いシステムから移れると思ってID・パスワードを入れて手続きしたそうです。ただ、IDがメールアドレスになっていて、そのアドレスはもう使っていないものなのでサインインした後に変更手続きをしようと思ったそうです。
 以前、クロネコヤマトの会員サービスで、IDがメールアドレスになっているのですが、一度決めたIDを変更できないという仕様になっていました。しかし、いくら変更できないとはいえ、廃止したアドレスに連絡をされても困ります。クロネコヤマトのサービスではIDは変えられなくても連絡先メールアドレスは登録できるようになっていました。現在ではIDも変更できるようになっています。
 話を元に戻すと、AIがチャットにて質問を受けてくれるというので、さっそくAIに「メールアドレスを変えたい」と入力したそうです。メールアドレスを変えたい。主語1つ、述語1つ。システム開発の時に普通にテストしていそうな質問文ですよね。しかし、回答候補は以下の4つ。

  • 登録したメールアドレスがわからないため、パスワードの問い合わせができません。
  • 会員登録をしましたが、メールが届きません。
  • WEB会員サイトのID・パスワードが分からない
  • 「メールアドレスが重複しています」とメッセージが表示されます

句点がついているものとついていないものとがある*1理由はわかりませんが、それは置いておいて、的外れです。お役に立ちましたか?と聞かれたので「ダメ」という選択肢を選びました。実はこのあたりから、わたしも一緒に画面の前で悩んでいます。昼間はオペレーターが引き継いでくれるのですが、時間外はあきらめるしかありません。もう少し教育してからリリースすべきかと思います。
 また、AIに受付をさせてFAQに振るというのはよくありません。AIが受付するのであれば、画面でできるすべての操作には説明ページをつくっておくべきです。FAQというのはよくある質問という意味です。本当によくあるわけではなくて、システムを作った人が「こういう質問には説明しておいた方がいいかな」と思いついたものがまとめられるのが一般的です。家電のマニュアルは薄い方がいいという話と混同していませんか。質問者はどんなことでも質問しますから、回答はマニュアルほど網羅していなければならないのです。ただ、それを全部利用者が読む必要はありません。そのためにAIがいるのです。利用者が自分で探すページは要点がまとめられているFAQ、AIが振る先はマニュアルであるべきです。ただ、開発納期が短かったり、開発予算が少なかったりすると、FAQやマニュアルのことは後回しになり、気づいたときには手遅れになります。
 利用者からメールアドレスを預かっていて、それが生涯不変*2なものでなければ、変更する場合があると考えるのが普通です。変更する場合があるのであれば、変更する場合の説明文は必ず用意すべきです。しかし、とりあえずAIに聞いてもわかってもらえませんでしたし、サイト内のサーチエンジンでも引っかかりませんでした。
 あれこれ探して会員情報の変更画面らしきものが現れたので見たのですが、住所と電話番号は変えられるのですがメールアドレスだけありません。でも、間違いなく、メールアドレス情報をお持ちですよね。なぜなら、IDに組み込まれているのですから。
 ふと思いつきました。「あれ、これまで使っていた旧システムではどうなのか」と。試しにサインインして探してみると、旧システムにはメールアドレスの変更画面があるではありませんか。
 新システムを使っていない人に向けてID・パスワードをわざわざ葉書で配っているわけです。つまりは、今後、新システムを使ってもらいたいと思っているはずです。しかし、機能が落ちています。しかも、AIはやり方を答えません。
 このシステム、怪しいECサイトではなくて大手企業のものです。契約者から受け取って登録したすべての情報を洗い出したうえで、どのような手順で変更を受け付けるのかを確認していないと思われます。
 大手企業を相手にするような名門IT企業でさえ、システム開発をする力が衰えているのではないかという気がします。開発会社も悪いですが、この画面でいいと判断した発注企業も問題です。こういうものを放置しておくと、オペレーターがクレームを受けてストレスをためるだけになります。オペレーターの派遣会社が、こういう会社の仕事は受けたくないと思うのか、むしろシステムがだめなほど問い合わせ件数が増えて儲かると思うのかはわかりません。ただ、オペレーターがストレスをためるということは、契約者もストレスをためるということです。

*1:入力書式が統一されていないというのは、みんなが思い付きで作文をしたものを寄せ集めた、誰かにチェックをしてもらっていない、あるいは、開発チームがずぼらであるという証拠です

*2:本人確認書類を受け取っていて、登録時に確認していれば、生年月日は生涯不変なものです。ただし、名前は裁判所に行けば改名することはありうるし、住所や電話番号は当然、変わることがあります。本人確認していない場合は、誤入力による修正ということがあり得ます。つまり、利用者から提供を受けた情報はほぼすべて変更可能なものでなければなりません。むやみに変えてもらっては困るので「電話で受け付けます」でも仕方がない場合もありますが、そうだとしてもそう書くべきです。アフタコロナでは、例えば携帯電話会社はショップに来てもらわずにWebでほとんど処理ができます、とテレビCMまで使って周知しています。実際にはできない処理も残ってはいるのですが、これから作るシステムであれば100%インターネットで受け付けられるようにすべきでしょう。