周回で0円

ETC誤収受でNEXCOを責めるのはかわいそうと思った*1が、同一インターチェンジ入場・出場で、正しく料金表示されなかったというのはいただけない。
同じICで入出場をしたのは1件ではなく、数件あったという。このような使われ方をしたきっかけは割引サービスであったが、ITシステム設計としては割引サービスは関係ない。NEXCOはサービスエリア自体を目的地としているわけだし、交通料金システムの設計コンセプトとしてすべての利用パターンを想定してプログラミングをしなかったというのはどういうことか。鉄道だって、乗るだけを目的に何千キロも利用する人がいるわけだし、「まさか、高速道路を走るだけを目的に何千円もかけて一周する人なんていない」と考えるのは間違いであった。
社会的に効果があったのなら、ETCの天下り団体が儲けるのは、ETCシステムを思いついたご褒美としてはある程度仕方がないのかなと思う。しかし、その後も関係ない国土交通省の役人の年金がわりに使われるのは少し悔しいし、設けた金をまともなシステム設計に使ってほしい。
周回利用の実態を把握しにくい問題はいろいろなところにある。

  • 朝から晩まで山手線の座席で寝ている人はいくら?
  • 首都高速環状線のルーレット族は距離制に移行したらいくら?

周回利用を時計の文字盤にたとえると、例えば以下のようなことが考えられる。

  • 12時の位置から一周した場合はいくら?
  • 12時の位置から(1)12時まで行った場合と、(2)11時までしか行かなかった場合と、(3)13時まで行ってしまった場合の整合性は取れているのか?
  • 12時の位置から1時まで行くのと一周以上して13時まで行くのに差をつけるのであれば、さらにもう一周して25時まで行ったらどうなるのか?
  • 山手線の場合は、外回りが事故で不通ならば内回りを利用するというようなことが当たり前に行われる。利用距離を厳正に課金するなら、12時の位置から5時まで行く場合と、左周りで5時まで行く大回りの場合は料金が変わるのか?
  • 12時の位置から1時まで行って、後戻りで12時や11時まで行ったらどうなるのか? 通常の高速道路では鉄道のような後戻りは難しいが、箱崎JCTなど一部では折り返しが可能である。

そもそも、利用者は設備投資された高速道路や鉄道を使うことに対して料金を払っているのか、それとも短時間で移動できる利用者の便益に応じて料金を払っているのか。それを踏まえた上で、利用者が自分で大回り・後戻りできるのか、異常時に運営者側が大回り・後戻りをさせる必要があるのかなどを踏まえて課金の仕組みを決める。そして最後に、特別なケース・・・今回のようなちょうど一周した場合などの例外パターンを洗い出して対応方法を決める必要がある。
周回利用への課金を厳正に行おうとすると、検問システムを強化しなければならない*2が、まれな利用形態に対して設備投資をする価値があるのか*3など、考え始めると奥が深い課題である。

*1:http://d.hatena.ne.jp/o1y/20090329#1238346151

*2:本線上で通過をチェックして、正確に利用経路を把握する仕組み。2007年4月13日のNEXCO中日本プレスリリースによると、東名高速豊橋本線料金所』・北陸道米原本線料金所』は、それぞれ年間約9千万、4千万円の運営経費がかかっていたそうだが、同年5月31日正午に廃止された http://www.c-nexco.co.jp/info/charge/070412142812_1.html

*3:とはいえ、今回の0円問題は、プログラミングをきちんとするだけの問題だから、ちゃんとやってほしい