ストリートビュー

Windows Media Playerや、Amazon.co.jpの「お気に入り」はさんざんたたかれたが、日本人はGoogleには甘い。
高木先生が孤軍奮闘している。http://b.hatena.ne.jp/entry/http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20080829.html%23p01で指摘されている事件については、明らかに犯罪である。
日本には共産党員がビラをポストに投函しただけで逮捕する警察がいるのだから、報道機関でもないのに、勝手に私有地に入って写真を撮り、Webで公開している企業は家宅捜索したほうがいいと思うが、捜査機関は何かGoogleに弱みを握られているのだろうか。あるいは、かの国の怪しい施設までWebにさらけ出す企業だから、その高い調査能力を買われて、すでに何らかの協業関係にあるのかもしれない。日本に限らず、捜査機関は身内は摘発しないものだ。
そのうち、盗撮犯がミニスカートの写真を押収された言い訳に「Googleにヒントを得て、子供の視線で下からのぞいてみようというサービスを計画しております。子供の目の高さから見えるものしか撮影していません。誰でも入れる場所でしか撮影しません。何か不正なものが写っていたらつど処理しようと思っていました」と言い出しかねない。Googleを許してのぞき犯を許さない理由はないことに世間は気づいてほしい。
Googleのコメントは釈明になっていないことにも気づかなくてはならない。問われたときに、質問に正面から答えず、とにかく自分の行為を正当化しようとするのは、犯罪者と同じである。ゴールデンのドキュメンタリー番組で、監視員と万引き犯、交通警備隊と違反者の会話を聞くことができるが、最初は必ず自分は悪くないと言う。目の高さで撮影していることが法律上、そして社会通念上許されるかどうか分からないが、そんなことをコメントの冒頭で説明しはじめることに意味がないこと*1をまずは自覚してほしい。内部統制なく情報を垂れ流しているという批判に対して、現状を認めて、どう対策を打つのか表明することだ。最近のテレビは、頼んでもないのにお詫び会見を垂れ流しているから、せっかくだから、そのうち2つ3つをよく見ていればわかることだろう。

個人情報保護の未来が危うい

我々の想像以上に、意外な情報がデータベース化している。ひとつひとつの情報は単体では個人情報ではないが、データベース化して紐づけて利用できれば、立派な個人情報だ。これは現行の個人情報の保護に関する法律で十分成立しうる範囲である。
「4」とか「38」とか「206」は単なる数字である。これらの数字が寄り添って、「03」で始まる10桁の数字がたくさん並ぶと、なんとなく「東京の電話番号一覧かもしれないな」と勘のよい人なら気づく。でも数字だけならまだ個人情報ではない。ところが、これに名前が紐づくと立派な個人情報になる。検索可能な形であれば個人情報データとして個人情報保護の対象となる。
現在は道路から撮った写真の集合なので、それだけでは何もできない。車のナンバープレートや個人の振る舞いまで映ってしまっているのでプライバシーの問題はあるが、個人情報ではない。でも、今後のコンピューターの進化によって、映像も分析できるようになったらどうなるか。
何の根拠もないが、現在、データを勝手に収集して公開するサービスが無料で提供されているくらいなので、将来はデータをマイニングしたり集計したりするサービスも無料もしくは格安で公開されるような気がする。ひとつひとつは紐付きが薄い情報でも、それをたくさん集めてマイニングすれば、コンピューターが個人情報の調査をしてくれる。興信所が不要になるほど、誰でも自宅で他人の情報を調べたり、あばいたりすることができる*2。そのとき、情報収集及び無料提供を行ってきた企業(そのときのメイン・プレーヤーがGoogleかどうかはわからない)は、「すでに公開されている情報なのだから、問題ないでしょう」と必ず言うであろう。立法や行政は、公開を規制強化するのか。それともマイニングを規制対象とするのか。マイニング技術が普及しはじめたときには規制しても手遅れだと思う。winnyの問題だって解決できていないのだから。
今年は国家が死亡予告をするというフィクションの映画が公開されている。死亡予告は難しいが、個人情報暴露予告ならできる時代がくる。ある日、愉快犯が「えーっと、きょうはー、○○町の、名前が「た」で始まる誰かの情報を、ばらしまーす。これから検索とマイニングを始めますのでぇー、いちにち待ってくださいね」なんてネットに書き込む。無料の情報と無料のサービスを駆使すれば、見知らぬ人のプライバシーはどんどん集まってくる。そのうち同調者も現れて頼んでもいないのに掲示板には情報が寄せられる。個人情報はすべてあかされてしまう・・・これは考えすぎかもしれないが、技術的にはありうる話だ。
さて、個人情報を相手に握られてしまった個人は、匿名で抗議や批判することもできない。何らかの属性から、抗議を受ける側に個人を特定されてしまうからだ。もう都会の住民は、ナンバープレートや自宅の写真まで捕捉されてしまっている。これは単なる危惧ではなく事実だ。今後、何が捕捉されるかわかったものではない。たぶん、心の中か、DNAの配列が公開されるまで、暴露願望は広がり続けることであろう。
現在の時点でも、個人情報保護法制は何も機能していない。Googleがマスコミの取材を拒否しているということは、個人情報保護窓口が完備されていないということで、それすなわち個人情報保護法制の趣旨に違反しているわけだが、それを告発するには個人からの苦情が必要になる。高木先生が苦情を訴えるには高木先生の車のナンバーがWebに出ていなければならないわけだが、そこはGoogleも慎重に画像処理するだろう*3。残るは個人情報に関する認定団体が動かなければならないが、Googleの主管団体って何だ?ということになる。国民生活センター?、消費者庁?*4・・・Googleは無償だから消費者団体では難しいのだろう。
Googleのことを書いているが、その投稿もGoogle Chromeで書いていたりするわけで、GoogleのないWeb生活ではありえないし、功績は評価しなければならないが、だからといってGoogleが何でもしていいということにはならない。

*1:通りを歩いていて人にぶつかったとする。「わたしは正しく歩いていました」「歩くにあたってそれなりの注意は払っていました」「歩き方に問題があればあなたからわたしに言ってください」「あなたがわたしにぶるかるように歩いていたのでしょう」とは誰も言わないだろう。「大丈夫ですか」「ごめんなさい」という言葉が最初に出るのが社会人ではないか。

*2:わたしも、4年以上にわたってはてなに書いているので、書いていることとGoogleに載っていることを集めてマイニングされたら、わたしの住所・氏名・年代などは、現在の技術でもばれてしまうかもしれない。この技術が無償提供されたらどうなるのか考えたくない

*3:でも、それをするには高木先生やその親族の住所等を入手している必要があるな

*4:そもそも、設置されるの?