「ご」

 ある会社からはがきをいただいた。

ご利用料金のご請求方法変更のご案内

「ご」が3つ。ご案内1個くらいならまだ目をつぶってもいいが、3つはやりすぎだろう。そのうち、自分の行為を尊敬表現する会社が増えるだろう。
 将来は、このような用法がありうるのではないか。

  • ご意見に対して、当方でご検討させていただきました。
  • 弊社はおかげさまでご上場しました。
  • ○○駅前に新店舗をご開店させていただきます。
たぶん、10年後は普通に使われていると思う。

自分のことをお上品に見せたい商売人が、相手に及ぶ自分の行為を丁寧表現するのをはやらせた。「お越しの方に、よりすぐりのお品をご提供いたします」のように言うデパートと、「お客様、おビールはいかがですか」のように言う水商売だけだったのが、世の中に浸透してしまった。

  • ご提案する
  • ご提供する
  • ご請求する
  • ご回答する
  • ご訪問する
  • ご回収する
  • ご展示する
  • ご確認する
  • ご確定する
  • ご判定する*1

「お詫びします」「お答えします」「お知らせします」「お掃除する」など、謙譲語として動作に「お」+サ変動詞をつける用法はあるが、「ご」+ 名詞(漢語) + するは、丁寧語のつもりなのか、謙譲語のつもりなのか。何だろう。
 相手の動作に関する丁寧語に、「ご苦労様」「ご検討ください」「ご回答ください*2」というような用法があるが、これらの転用なのかもしれない。
 似たように見えても、「お見積もりする」は、「見積もりを取る」あるいは「見積もる」の誤用、お答えしますは謙譲語。「お勉強する」は単なる過剰敬語*3
 「お食事する」は、食べ物に関する言葉として「御飯」「御寿司」「お箸」と同様に許されるのではないか。「ご紹介する」は、自己紹介のときには使わないみたいなので、目上の人に、別の目上の人を紹介する場合は、紹介をしている自分の行為を謙譲しているわけではなさそうである。でも身内や自社製品を紹介するときに言う場合はいかがなものか。

わかろうとしているが難しい

*1:ATOKはさすが。ゴハンテイの第1変換候補は「誤判定」。その通りだ!

*2:「ご回答いただけますか」は「ご+回答+『を、私に』+いただけますか」の省略形か

*3:勉強するは、動作の効果が自分に向かう名動詞なので、そもそも敬語にする対象ではない。もし勉強する人が目上なら「お勉強される」「お勉強なさる」。セールスマンが客に言うときは「勉強いたします」