無駄が必要なこともある

@ITで、画面デザインに関する記事(http://www.atmarkit.co.jp/fwcr/rensai/usability05/01.html)があって、共感することが多かった。たとえば、住所登録のWeb画面で、郵便番号と都道府県を同時に入力させる画面があることを取り上げているが、わたしも長年気になっていた。今は7桁番号制だから、住所を伝えるのに都道府県はおろか、市区町村名も不要なのである*1。でも、昔から書かせているからといって、安易に都道府県からの入力を必要とする画面が多い。都道府県欄は無駄である。いいことを言うなあと思った。
 しかし、生年月日と年齢を同時に入力させる画面についても取り上げられていたが、重複の例としてふさわしくないと思った。
 確かに、9割以上のサイトでは無駄なのだろう。しかし、考えがあって欄を設けている申込書もあるのだと思っている。解説に

紙の帳票をそのままウェブフォームにしたような場合にこういった問題は発生しやすい

とある。しかしだ、この重複は紙の場合必要で、電子画面の場合不要なのだろうか。
 人間が郵便番号を住所に変換するには、パソコンの郵便番号辞書に入力するか、冊子の郵便番号録を調べる必要がある。ところが、ビジネス手帳の巻末にもある通り、誕生年と年齢の対応関係は百余りしかないのだから、紙で申込書を受け付ける人にとっても必要があれば対応表を見ればいいことだから、両方書いてある必要性は本来ないはずなのである。むしろ、生年月日なんてすぐに覚えてしまうだろう*2。 それでも記入させるのは、

申込者の記述や記憶が信用できないから

である。6と書いたつもりが0に見えたり、意味ないのにふだんサバを読んでいる年齢を書いてしまったり*3、西暦と和暦を間違えたり*4するからである。
 あるいは、歳を聞いたあとで干支を確認するのと同じように、記入者が意図的にごまかしたり他人になりすましたりしていないかを確認するためのものでもある。
 著者は、郵便番号と都道府県が気になって記事を書くような方である。一般人が自分の生年月日や年齢を間違えて書くことなど想像できなかったのだろう。しかし、今日の日付がわからない人*5、年齢を忘れる人、住所や電話番号を正確に言えない人*6は世の中にたくさんいるのである。

 Webでは、数字の入力欄をドロップダウンリストにすることが多い。このインターフェースは功罪あり、キーボードを使わなくても入力できて便利に感じる人も多いだろうが、少し手がすべると隣の数字を選んでしまうという欠点も持っている。紙では正しく書く人が、Web入力画面では間違って入力することがありうるのだ。
 いったん郵便番号と住所の話に戻るが、記事には、

もし入力された郵便番号と住所の対応が間違っていた場合、システムはどちらを信用するのだろう

ともある。郵便番号は引っ越しや住居表示変更のため不変のものではないので、対応が間違っていたら自分のシステムが持っている郵便番号辞書*7を疑うとともに、申込者に聞くのが正しい。対応が間違った入力をさせないために片方しか入力させないというのは手抜きである。
 年齢によって受けるサービスに違いや制限がある場合の申込書は、意図的に生年月日と年齢を記入させ、新潮に矛盾確認や二重チェックを行うという要件があってもよいわけである。だから、生年月日と年齢の二重入力は場合によっては許してやってほしい。ただ、そこまで深い読みがなく、ただ惰性で欄を作っている申込書(画面)については即刻削除してほしい。おそらく入力された数字を検証もせずデータベースに突っ込んでいるだけなのだろう。
 前述の記事はよい記事だと思うが、重複のあるサイトを一緒くたに糾弾するような人が出てこないことを祈る。

時には無駄も必要である。

*1:ただ、7桁になっても市区町村を省く慣習は定着しなかったら、市区町村名を書かせるのは書く人の感覚に合っているだろう。不要だからやめろとは言わない

*2:例えば、1950年って書いてあったら、今年2005年であれば54歳か55歳であることは、数週間くらい書類受付担当者をやれば覚えてしまうだろう

*3:特に女性

*4:たとえ、すぐそばに「西暦を2桁でなどと書いてあってもおっちょこちょいの人は間違える」

*5:これはわたしのこと。申込書最上段の「記入日」欄でいつもつまずく

*6:たとえば引っ越した直後の人など

*7:たとえば、A市にB町が吸収合併してA市になった場合、古い郵便番号辞書で整合性チェックを行うと、旧B町の郵便番号でA市と書いてくる人をミスマッチとしてしまうおそれがある。それを想定して新しい郵便番号辞書を常にそろえると、吸収合併があったことを忘れた人が旧B町で書いてくるとこれまたミスマッチになる。難しいものだ。ただ、それでもなお、都道府県はいらない。平成の合併でも都道府県が変わったのは長野県で1例あったくらいである