災害時には規制解除を

北海道で地震があったが、その前夜に台風が来たことも衝撃的だった。
地震発生よりも前に台風でJR函館線は運転見合わせとなり、道内各地から新千歳空港に行く公共交通はバスだけになった。実はわたしはこの日にすすきのからタクシーに乗った。終バスは18時台で、夜の航空便に乗りたかったがタクシーしか手段がなかったのである。
運転手の話を聞くと、その日は営業所を出庫する時に空港の交通事情について聞いていたので、空港に行きたくなくて駅周辺を避けて繁華街にいたら、運悪く空港に行くわたしに捕まえられたようである。
高速道路に乗ると、対向車線にやたらタクシーが多いのがわかった。札幌周辺でも高速道路には街路灯がないので、夜でもタクシーだとわかるということは、屋根に明かりが付いている空車だということだ。運転手は「空港から札幌に戻る車でしょう。私なら下道で戻りますけどね」と言う。
高速道路を下りてターミナルに向かい、信号待ちで止まる。あたりを見ると前も後ろもタクシーである。「あれも札幌です、こっちもだな、あ、あれは地元ですね」と教えてくれた。
夜のターミナルに着くと、タクシー乗り場には、公共交通機関を奪われた観光客が大行列を作っている。乗り場を避けて止めてもらい、ドアを開けてもらうと「運転手さん、行けますか」と疲れ切った人々がゾンビのように近づいてくる。
乗り場から離れたところで待っているのはうまいなと思ったが、ここで運転手は聞く。

札幌ですか?

たまたまその人は札幌に向かうらしく、契約成立。わたしは「往復で実車で行けて、よかったですね」と運転手に告げてターミナルビルに入った。
あそこでタクシーに乗った人は数時間後にホテルでさらにひどい目に遭うことになるのだが、この時点では乗客も運が良かったねと思った。

営業区域の規制は解除せよ

札幌で営業するタクシーは札幌発着でないと客を乗せてはいけない決まりになっている。だから今回の運転手は長距離でも空港に行きたがらなかったし、ターミナルは到着客であふれかえっていたにもかかわらず空車で戻る車が続出した。
近くのレンタカーの営業所からは素人が地図も見ずに出発するというのに、タクシー運転手だけ地元の会社しか客を乗せてはいけないというルールはおかしい。需給調整のために営業区域が定められているというのなら、需給が崩れている災害時は遠くのタクシー会社も支援に行けるようにしたらいい。北海道では難しいが他県から応援にかけつけてもいい。
災害時はボランティアもいいが、まずはビジネスができる人がしっかり営業してほしい。それを妨げる規制は邪魔だ。鉄道が止まっていれば他地区の運転手は商売にならないはずである。一方で何時間もタクシーを待つ乗客がいる。
あるいは、千歳市と札幌市は同じ営業区域にできないのか。
地震で電力が止まったときに世耕経済産業大臣が会見を開いていた。さすが安倍政権が経済産業省内閣だと言われる名に恥じない対応だと思ったが、国土交通大臣観光庁長官はタクシー業界に何かしたのか。
国土交通省規制緩和しなくても、札幌行き専用の乗り場を設けてもいいだろう。空港ターミナル会社だけでできることもある。