事故米事件 さらに続き

小麦粉高騰で、米穀消費を拡大する絶好の機会だったのに、米もだめなのか、という空気が流れている。

農林水産省

農林水産省はなかなかかしこい役所で、失言癖のある大臣のテレビ出演を黙認するという荒技を持ち出してきた。討論番組ではなく単独インタビューであるから、話の流れで口が滑ったという言い訳もできない。屁の突っ張り発言の金メダリスト石井選手に、日本柔道の将来を語らせるようなもので、偉い人なら誰でもテレビに出していいというものではない。BS番組の収録中に自信を持って健康被害はないから騒がないと言わせ、収録後に「そんなことを言ったかな」と恥の上塗り。あえて自分に非難の目を向けようという戦略が大臣になければ、ここまで見事な失態はできない。これで事務次官は「批判は大臣に向かう。これごときの件で自分が辞めなくても済んだかな」と思ったかもしれない。辞める直前の大臣は使いやすい。
農林水産省が、国民のための役所ではないことは誰でも知っているわけだから、中途半端に首を突っ込まないほしい。「安全に影響ありません」というのは、野田担当大臣に代弁させておけばいいことであって*1、今や、農林水産省の管轄ではない。
与党が政治主導を目指すのであれば、自信があるという発言はまったく意味がないし、むしろ不信感を招いて逆効果であるから、「どうして役人が消費者保護を捨てて業者保護に走るのか」を考えることに力を注ぐべきだろう。米の規制緩和はまだ歴史が浅い。自主流通米の流通業界には中小企業が多く、族議員、あるいは生産者団体のような強力な票田を持った勢力を確認することはできない。それなのに大臣が業者の権利を主張するということには何か思惑があると考えるしかない。話がそれるが、権利を主張するなら、カメラの前で事故米を炊いて食べてほしかった。。。
野党議員が「構図が薬害に似ている」とテレビで言っていた。ただし、事故発覚後の役所の動きは似ているが事件が起こった背景は違う。
薬害と似ているとしたら、報道されていないような強力な政治圧力があった可能性を検証しなければならない。ただし、農林水産省は今回の事件を受けて事故米の入札を行わない、すなわち事故米や関係企業だけではなく、マーケットそのものを潰すとしているので、マーケット参加者の利権は絡まない。この可能性は小さい。
可能性が高いのは次のような論理である。

  • 健康行政は厚生労働省の管轄で、カイワレ事件のときも菅大臣(当時)が食べて見せた。農水省の安全宣言は形式的なもので、太田大臣が事故米を食べる必要はない。うちは業者擁護だけやっていればいい。
  • このくらいのことはいくらでもあるので、いちいち取り上げていたらキリがない。
  • 予算の問題だけでなく、物量としても調べ切れないので、何でも役所任せではなく、消費者が自己防衛してほしい。健康被害がない範囲でこういう事件がいくつか起こってくれれば消費者はもっと自分で安全コストを払うようになるだろう。

最近では自給率向上という言葉を聞くようになったが、その背景にあるのは安定供給である。供給が途絶えさえしなければ、米騒動が起こりさえしなければ、多少いかがわしい流通でも仕方がないから、粛々と出荷・流通・販売をしてほしい。国民は安全、安全というが、農林水産省は安定供給も考えなければならないので、今回のようなときに多少突っ込まれるのは仕方がない。たぶん代弁すればこいうことなのだろう。でも安定供給に対する政策方針が「業者を不正を見逃すこと」「業者の不正を見つけないように検査すること」では消費者として納得できない。
流通業者の権利擁護は、農林水産省のみならず、すべての行政機関の裁量がからむことを一切禁止して、連鎖倒産防止のために機械的に支払われる保険制度と、悪徳業者への厳罰、積極的な情報公開の3点で対応したらいい。生産者育成と監視に重点を置く。生産者育成は、費用高騰が続く現状では、所得補填もある程度はやむを得ないが、過剰生産品目の給食や福祉施設での消費拡大、米の用途拡大、輸出競争力のある高付加作物の推進・・・あまり新しいことは思いつかないが、そういう分野に注力してほしい。生産者保護はほどほどに。参入者の育成が重要。ちなみに、農道や灌漑事業も大幅見直し。監視は、厚生労働省の検疫と合わせて、別の役所でやった方がいい。自治体にやらせるか、新しい役所でやらせるか。今の予算の組み換えで多くのことができるのではないか。

めざましテレビ

電気自動車が二酸化炭素ゼロという都市伝説を全国放送していた、めざましテレビのココ調*2であるが、13日の放送では、発表されている毒物ひとつひとつについて、加工食品に残留しているかどうかを検証していた。焼酎などには、蒸留工程があるから、「発がん性の高く、健康被害が心配される毒物」の混入はゼロになるという番組実験結果を披露。相変わらずゼロが好きだなと思ったが、行政の発表をうのみにせず、安全か危険かを客観的に報道しようという姿勢は悪くないと思った。それによれば、焼酎については食品に残留している毒物は体内に蓄積するほど多量ではなく、残留してはならない毒物はゼロ、かもしれない、ということであった。

*1:実働部隊を持たない大臣だから、発言が安心感につながらないという問題があるが、他に担当閣僚がいないので仕方がない

*2:http://www.fujitv.co.jp/meza/kokoshira/index.html http://d.hatena.ne.jp/o1y/20080610