純正外製品が生むコスト

 家庭用インクジェット・プリンターのリサイクル・カートリッジに関する裁判があり、プリンター・メーカー側がとりあえず保護される判決が下されたという。
 とある量販店の売り場に行ったら、互換性カートリッジの陳列棚の隣に純正品メーカー各社のリサイクル回収ボックスがあった。なんで純正外(サード・パーティー)製品メーカーは回収ボックスを置かないのか。
 別の店では、陳列棚に並んでいるのは純正品で、売り場から外れた階段脇に置いてあったのは各メーカー共通回収ボックスになっていた。この出所不明の回収ボックスで集められた使用済みカートリッジが互換製品メーカーに流れているのだろうか。根拠は何もないが、もしたまたまこの仮説が当たっているとすれば、純正品を買っている人からしたら、純正品のシェアを下げて単価押し上げ効果を生む元凶になっているボックスである。集めている店として、回収ルートの説明が必要ではないか。店に言わせれば、店として積極的に回収したいのではなく、メーカーに場所を提供しているだけなのだろうが、それでも窓口になっている責任があるだろう。
 プリンター・カートリッジの前は電気掃除機の互換紙パックだったろうか。互換紙パックは有名企業も参入していたが、電器屋さん泣かせであった。「買ったばかりなのに故障した」とのクレームを受けて顧客の話を聞くと、本体の欠陥よりも、互換紙パックによる故障や不完全装着が圧倒的に多かったという。自分の店で買ってくれない、かつ、自分の薦めた消耗品を買ってくれない客に怒られる電器屋さんはかわいそうである。
 自動車のガラス撥水材の類は、自動車メーカーにとっては非推奨。ワイパーのびびり*1などを起こす。わたしもワイパーのゴムを交換してくれと頼んだことがあるが、ディーラーからは、ゴムを見る前に「ガラスに何か塗っていませんか」と言われた。別にクレームしたわけでもないのだから、黙って変えてくれればいいのに*2
 保守やサポートに携わる人たちは、純正外製品にうんざりしている。自分たちが売ったものではない物で不具合が発生し、客が怒る。保守担当者にストレスがたまる。するとそのストレスを別の客にぶちまける。

「なぜそんなものを使っているのか」
「マニュアルに純正品を使えと書いてあるでしょう」

と説教を始める。
 なぜ純正外製品メーカーが儲けるために、いろいろな人たちが迷惑を被らなければならないのか。市場価格を下げ、あるいは消費者に新しい選択肢を与え、社会貢献したと思っているかもしれないが、そこで利益が発生すればするほど、保守担当者や客がコストを負担しているともいえる。
 単に

寡占企業が消耗品で利益を出している

という謀略論で語られては困る問題だ。
 VHSカセットやDVD、最近ではSDカードの類はあまりトラブルを聞かない。互換製品で市場参入したい人がいるのなら、きちんと規格を定めて公認を与えることである。

*1:稼働中のワイパーが、音を立てながら、ガラス表面をむらなく拭かなくなる現象

*2:応対はクレーム対応風だったから、クレーム処理として無料で交換してくれるかと思ったら、きちんと部品代は取られた