多品種生産、加工食品の場合

 ある有名なアイスクリームに新しい製品が出たので試しに買ってみたら

すごくまずかった。

 市場が成熟してくると、消費者は大量生産に不満を覚え、供給者は多品種生産をするようになる。
 高付加価値製品にはオプションやカスタマイズ、オーダーメイドを提供できるが、単価の安い製品を大量生産していた業界はそういうわけにはいかない。そこで少量生産や短期生産という手が発明された。この「少量」と「短期」という2つの限定戦略だが、同じように見えても意味が少し違う。
 少量生産は、地域限定や限定プレミアム製品など、市場全体に供給できないことを逆手にとって買い手を誘う生産方法であり、短期生産は大量に生産して供給を限定することはしないが、期間限定ゆえいつまでも買えないことから買い手の焦りを誘う生産方法である。
 消費者は物珍しいから買うわけであるが、このことがわかると多品種生産の難しさが見えてくる。物珍しいものに手を出す消費者はどんな商品が好みなのかということだ。
 そのような消費者は、その商品企画、食べ物で言えば限定の味つけが好きだから買うわけではない。だから、実際には思ったよりもおいしくない、よって満足しないということが起こる。
 供給者側には新商品のアイデアが必要だ。定番商品ではないが、大衆受けする商品とは何だろう。やがては受けねらいや変わり種が出てきて、わたしのようにまずい商品を引き当ててしまう消費者が出てくる。まずくても短期勝負、極端に言えばリピーターになってもらう必要はないので、短期的には売り上げに影響しないが、あのメーカーの変わり種商品はまずいという評判が広がれば、短期生産という戦略自体が飽きられてしまう。コストをかけたり、原料供給が限られている限定生産では満足を高められなくはないが需要に対応し続けることができない。
 今、スーパーでレジの周りを占めているのは、期間限定の変わり種お菓子やインスタント食品の類である。でも、あらゆる商品がそんなことを始めたら加工食品業界全体で消費者に届けるマクロの満足度は下がっていく一方だ。だって、

  • 好きな味とは限らなかったが、買ってみたらおいしかった。 →でも長くは買えない。次は売っていないかもしれない。
  • 好きな味とは限らなかったが、買ってみたらまずかった。 →しょうがないのかな?、でももう二度と買わない!

 どちらもハッピーエンドとはいかないみたい。
 復刻版、おまけ付き、ダンピング、食べ方の提案、タイアップ、健康など別の観点からの提案、販売チャネルの多様化、、、いろいろ試していると思うが

新しい手はないかな。