本当の「電卓の選び方」

 ピアノやエレクトーンを習うと、最初に鍵盤へ手の置き方を教わる。卵を握っているようなつもりで指を丸めて手を添える。楽器の場合は最初に出す音によって置く場所が決まるが、パソコンには最初に入力したい文字にかかわらずホーム・ポジションというのがあって、「F」キーと「H」キーに凹凸がついているから、そこに手の力を抜いて両手の人差し指を合わせる。手を置いたときにキーにフィットするかどうかが大切である。電卓には中央の「5」のキーに凹凸が付いている*1から、それを頼りに7〜9に真ん中の3本の指を置く。ここを基準に動かせば電卓を見なくても計算ができるようになる。
 鍵盤楽器の場合は鍵盤に合わせて手の方を慣らすのが一般的だと思うけれど、パソコンや電卓のキーには機種によってボタンの大きさや間隔にかなりの差がある。よって、自分の好みに合わせて選ぶことができる。手を置いたときに指が動かし安く、自然に1〜9と0に指が届くことが重要である。手が大きい人が小さい電卓を買うと間違えて隣のキーを押してしまうし、手の小さい人が大きい電卓を買うと手を前後左右に振らなくてはいけなくなり速度が落ちてしまう。だから、買う前に本物と手を合わせてみる作業が必須となる。オンライン・ショッピングでは本物を手に取ることができないから実寸画像がダウンロードできるようにしてほしい。
 寸法の次はキー配列である。1〜9の数字ボタンはほぼ共通だが、それ以外のボタンには決まりはないようだ。例えばCASIOの検算電卓のページ*2を例にとると、「C」キーが最下段にある型と、最下段にない型とがある。パソコンを使う多く人がかな漢字変換のときに無意識にスペース・バーを押すのと同じようにクリア・キーは場所を探しながら押すボタンではないのである。わたしのDS-20Lが壊れたら、DS-20Lと同じように最下段にCがある機種を買わなければ計算効率が半減する。だから、とても重要なことである*3。「C」キーが最下段にないJSシリーズは、昔のSHARPの電卓と配列が同じである。
 よく使う「+」キーや「0」キーも重要である。計算用途によっては「00」や「-」も重要だろう。ちなみにわたしの電卓には、マイナス・キーの「-」の印刷の上にさらに修正液を塗りたくって凹凸をつけている。マイナス・キーの位置を手が未だに覚えていないから、マイナスキーがある列のキーを上から下にこすって、ひっかかったら押せばいいというようにしている。
 メーカーが宣伝しているような便利機能の有無は、あったら便利なものもなくはないが、わたしの機種選びには全く関係ない。

電卓を売っている人は、電卓を知らないのだろう。

電卓の基本は打ちやすさと四則演算である。手になじむことが基本性能なのだから、他者と差別化できないからと言って電卓選びに必要な仕様の説明を省かないでいただきたい。
 算盤、計算尺、電卓・・・。日本人が計算機を高速に使いこなす文化は廃れていくのだろうか。そういえば、自分もWindowsの「スタート」→「ファイルを指定して実行(R)」→「calc」で*4Windowsの電卓を使うことが増えた。

*1:電話機のプッシュボタンにある「5」キーは目の見えない人のために凹凸が付いているが、普通の電卓は目が見えないと使えないから目の見えない人のために凹凸があるわけではない

*2:http://dentaku.casio.co.jp/lineup/checking.html

*3:国産車に乗っている人が輸入車に乗ると方向指示器のレバーとワイパーのレバーが左右逆で、操作を間違えることがあるが、ワイパーや方向指示器は無意識にやっているようでも交差点右左折や車線変更、降雨といったイベントに対応して手が動いている。クリア・キーを押すのは車で言えば座席に座るときにくぼみにおしりを合わせる行為のようなもので、レバーよりもさらに意識の外で行われるから、配列の異なる機種に買い換えると矯正に時間がかかる

*4:スタートメニューの「アクセサリ」から選ぶのは手数がかかるからcalcと打った方が速い