マイナンバー医療適用なら人権侵害の懸念=医師会常任理事

2015年10月7日ロイター。

日本医師会の石川広己・常任理事は、ロイターとのインタビューに応じ、マイナンバーを医療分野に活用することは、遺伝子治療が中核となるこれからの時代には人権侵害のおそれがあるとして強く反対する姿勢を示した。

マイナンバーは税分野での活用を想定して作られた。税を捕捉する上で金融は重要なものであり、金融商品の中には保険というものがある。生命保険及び医療保険の契約者データベースでは医療情報が管理されている。マイナンバーと医療はすでにつながる準備ができつつある。
医療用専用番号を作ったところで、犯罪者は金融機関の情報を悪用してその番号とマイナンバーを結びつけようとするわけで、意味がない。マイナンバーを導入してもどうしたら守れるのか理論武装し、ビッグデータを気軽に金儲けに使う業者を牽制する方法を業界として考えたらどうか。

医療情報の共有と連携は、すぐにはできないだろう。理由は3つほどある。1つは医師のPCスキルの問題、2つ目はシステム構築・メンテナンスのばく大な費用の負担、3つ目は医師サイドが情報連携の必要性を感じていないということがある

必要性を感じていただくのは簡単である。救急医療を除き、過去の投薬履歴を調べずに投薬したり、処方せんを書いたりした医師、処方履歴を記録しないで処方した薬剤師の保険点数を半額にすればいいだけである。

背番号時代において恥ずかしい診療を受ける方法

例えば、毛生え薬とか水虫の薬が処方されたことを知りたくないとする。今は「おくすり手帳を家に忘れました」と言えばいいが、マイナンバーと結びついたらカードを渡すと診察室のパソコンに処方履歴を見えてしまうのかもしれない。同じ病院で見られるのは仕方がないが歯医者に見られる必要はないだろうと患者は考えるかもしれない。
ポイントカードの情報を勝手に企業間で共有するのはけしからんと思っているわたしだが、医療情報は医療機関の間で共有してももらえなければ管理効果が現れない。
恥ずかしい薬だったとしても重複や飲み合わせは重大なリスクなので、患者が勝手にリセットできるのはよくないと思う。ただ、患者の了解を得ないと見ないような仕組みにするのがよかろう。コンビニで酒やたばこを買うときにレジの画面にタッチさせられるが、同じような物が診察室や調剤薬局にあればよい。
本当はインターネットにアクセスして、自分で記録を選んでマスキングできればいいが、なりすましや改ざんのリスクがあり、そのシステムを構築、管理する費用が高くつきそうなので我慢すべきである。
いずれにしても、今でも健康保険組合は自分に処方された薬を全部把握しているわけだから、今更、医者に見られたくないと思ったところで遅い。

製薬業界からIT業界への利益移転

医療費削減は喫緊の課題ではあるが、マイナンバーによって解決しようとすると結局ITシステム構築がかさんで、これまで薬の無駄遣いだったのが、コンピューターの無駄遣いになるだけになるのかもしれない。それでも医療費の伸びは爆発的であるから、ある程度ITシステムの力を借りることが医師の報酬を維持する上で重要なのではないだろうか。