おおざっぱな値上げ告知

消費税増税で、公共交通機関の各社が国土交通省に運賃改定を申請している。
まだ申請段階であり確定していないとして、利用者には詳細が告知されていない。例えば東京メトロは代表的な区間の変更内容をWebサイトでは公表していて比較的詳細だが、駅の告知では大きな貼り紙を使っているにもかかわらず詳細は認可後という内容である。
紙面の制約はないのだから、行政への申請内容を全部Webに載せてくれれば好感が持てるのに、乗客よりも株主や役所の方を向いているように見えてしまう。認可前に乗客に説明してはいけないという行政指導でもあるのだろうか。
5%増税時はどのようにしたか、燃料費や保守部材の高騰についてどう考えているのか、費用の圧縮はできているのかをきちんと説明すべきだと思うのである。ところが、よく見かける告知は、

  • 申請しました
  • 改定率は消費税増税分を下回るようにします
  • 詳細は認可後に発表します、以上

これだけである。
なぜどの会社も改定率を掲載するのか。そして、改定率中心の説明しかないのか。スーパーマーケットだったら「当店は増税分しかあげません、今後もセールを行っていきます」でいいと思う。スーパーマーケットの客はどれだけ買うのか、どの商品を買うのかを調節することができる。でも、鉄道やバスの利用者は、多くの場合値上げしても同じ区間しか乗らないのだから、改定率を説明されても関係ないのである。例えば160円区間の客は170円となることで、6.25%の値上げなのである。
時代がインフレだった頃は、新線を建設するのに1kmあたり数億もかかるとか、車輌を1両新造するのに新築戸建て住宅4戸分のお金がかかるとか、丁寧な説明があったと記憶している。再びインフレの時代が来るかもしれないのに「増税だから仕方ないです」に慣れると、そのうち「燃料費が高騰しているから仕方ないです」「物価が上がっているからしょうがないです」としか説明しようとしない会社が増えるのではないかと思う。冊子を刷るのはお金がかかるので、Webサイトを使って説明してほしい。
回数券の種類を増やしたり、増便したりなど、値上げはサービス向上を検討した後で行ってほしいと思うが、何も努力なしに値段だけ上がっていくのはつまらないと思う。競合路線がある地域では「他社より定期券の値上げは抑えます」「回数券をIC乗車券に入れられるようにします」「回数券の有効期限を6箇月にし、改訂前の運賃で乗車できます」といった特色あるサービスで競ってもらいたいのだが、「1円単位の値上げ」「増税分を下回る改定率」以外の話はどこからも聞こえてこない。