取り調べの可視化は自動で

Blogosで読んだが、取り調べの全面可視化を警察や検察が反対するならわかるが、弁護側も無条件賛成ではないらしい。全面自供事件の手続きまで長くなるので否認事案だけ録画するとか、弁護士の同意により録画省略するといったことを考えている人がいるという。
どうして物事を複雑に考えようとするのか。
ビデオテープに録画するなら別だが、いくらでもビデオカメラはまわしっぱなしにできるのだから、録画するしないを人が管理するのではなく機械任せにしておけばいいのである。

  • 取り調べ室以外の自白は裁判の証拠にできない。
  • 取り調べに関する実施場所と開始時刻・終了時刻は被疑者と弁護士の両方に通告しなければならない。
    • 特に被疑者に対しては取り調べ時に実施し、記録音声の中に含めなければならない。
    • 通告がなかった自白は裁判の証拠にできない。
  • 弁護士は、被疑者拘留期間に限り、すべての取調室の録画をいつでも謁見可能とする。
  • 録画ができているのかの確認は、映像・音の入力状況から、機械的自動的に行う。記録できていないことを検出したらエラーを出し、その部屋を使った取り調べは中止する。

これらの対策だけで十分である。機械は壊れるかもしれないから、2か所から録画・録音しておけば万全である。
家庭用のレコーダーで、全チャンネル連続録画ができる時代である。時刻も自動で記録されるし、顔認識や動作認識でチャプターを自動挿入することもできるだろう。頭出しも容易である。

取り調べを録画するのではなく、「取調室」を24時間365日録画しておけばいいのである。

取調室の連続可視化である。
録画作業は特定の被疑者と結びつかない作業になるので、録画によって司法手続きが長くなることはない。取り調べ前と後に少し会話が増えるだけである。各施設、取り調べ室が100も1,000もあるわけではないし、安いWebカメラで録画の品質は十分だから、各施設は家庭用のレコーダーと同じような機械を2セット買い、各部屋とLANでつなげばよい。ハードディスクは定期的に交換が必要であるが、録画した映像を人ごとに管理するプロセスを作ったり、録画媒体の出し入れ管理する人を置くよりよほど低コストである。
家庭用のビデオカメラやメディアを使うと、手違いによる意図しない省略、操作ミス、録画後の隠蔽、映像・音声の編集が入るおそれがある。部屋に据え付けのカメラ・マイクと、改ざん防止機能を内蔵したレコーダーを採用し、長期保存が必要なものは検察や弁護士がそれぞれメディアにダビングできるが、どんな人でも改ざん・消去はできないようにする。マスターは1年経ったら自動的に消えていくようにする。この機能は家庭用レコーダーにはないけれど、そんなに高くはないだろう。
録画作業は被疑者だけでなく、特定の取り調べ官とも結びつかない作業にすべきである。本来、被疑者、取り調べ官、弁護士のいずれとも利害がない者が公平に実施すべきであるが、行政がまとめて調達して施設に設置し、自動的に運用すれば近い状態にはなる。

FAQ

弁護士は、自らの弁護活動と関係ない事件の録画も謁見可能なのか? 誤って見てしまうことはないか?

裁判は誰でも傍聴できる。職業専門職に限定すれば問題なのではないか。
ある警察署の取り調べをどうしてものぞき見したいので、同じ警察署に拘留される別の被疑者を探して弁護を引き受ける? そんな弁護士がいるのか。
最近は弁護士にも怪しい人がいるので、悪用やのぞき見を心配するならば、誰が何月何日何時何分の映像を再生したのか、すべて自動記録させればいい。

メンテナンスが恣意的に行われる可能性はないのか?

それは取り調べの全面可視化・一部可視化でも同じ問題を抱えていて、取り調べ室の連続可視化だけの問題ではない。
いずれの可視化もメンテナンスは、誰が拘留されるか決まる前からあらかじめ計画して実施すべきである。

取り調べ時刻は機械的に記録されるのに、どうして取り調べ官が被疑者に通告しなければならないのか。

なぜか、取り調べ中に妄想を調書に書いたり、取り調べの記憶がないと自供する検察官が実在したので、取り調べ官のためにも必要なことである。

記録されないと裁判の証拠にできないとなると、せっかくの自供がきちんと録画・録音されているかどうか、取り調べ官は心配になるのではないか。

家庭用のレコーダーでも追いかけ再生できるのであるから、心配ならば別室で追いかけ再生すればいいのではないか。撮れていなかったら「悪いけれど、さっき話してくれたことをもう一回言ってほしい」で十分なのではないか。