節電

中途半端な節電

わたしが行ったビルでは、廊下の照明は集中制御であり、事務室の照明は壁にスイッチがある。
ほとんど人がいない廊下は煌々と電気がついていて、人がいる事務室は電気が消えていた。逆にしてほしいと思った。

節電ではない節電告知

街頭で、ビルの壁に設置してある大型の字幕ディスプレイを見かけた。遠くからでも読める大きな文字で、通常ならニュースなどの文字情報を流している縦型のものだ。そのディスプレイが延々と訴えていたのは、

当店では節電のため、店内の照明を減らして営業しております。ご了承ください。

だった。がっかりである。500m先の通行人にその告知は不要だから、店の照明をつければいいのにと思った。
たぶん「暗くてごめんなさい」と言いたかったのだと思うが、そのまま書けばいいのに、遠回しに「節電しています」と言ってしまう。しかし節電していない。4月に入って3月ほど電力がひっ迫していないからどう使おうと自由だが、その勘違いのまま夏に突入してほしくない。
あえて弁護すれば、もしかしたら電光掲示は商用電源ではなかったのかもしれないが、そうだとしても電源を切っておけばいいのに。ますます客が入らないよ。

何のため?

誰が始めた表現なのか知らないが「計画停電のため節電しています」ってどうことだ。
一部の工場で、連続して通電していないと不良品が発生してしまうために計画停電時間外でも操業していないラインがあるというが、それは節電ではなくて停止である。
そして、商店などで見かける「計画停電節電」の掲示。原因を形式名詞「ため」の前に「計画停電」があるから、文法上これは計画停電が原因であると言っているが、明らかに原因ではない。原因は電力供給能力の不足である。計画停電は電力逼迫の「対策」にあたり、原因ではない。「減量のため運動をしています」と言うべきところを「食事制限のために運動をしています」と言っているようなものだ。
「ため」は他の用法もあるが、次のような意味でもなかろう。

いずれも、意味が逆になってしまう。「計画停電阻止のための節電の省略形だ」という解釈も苦しい。
わたしが想像するに、最初に広めたのは鉄道会社だと思う。首都圏において、4月に行われている節電ダイヤは電力供給能力不足対策であり、利用が少ない便を中心に行われているが、震災直後に行われた間引き運転は混乱防止であった。鉄道に電力を優先供給する要請が政府から東京電力に対して行われた前は、ラッシュ時にも計画停電が行われるおそれがあり、駅間で満員電車が立ち往生する可能性があった。ただし電車は惰性で走るから次の駅が開いていれば駅までは走れる可能性も高い。よって、計画停電を理由にした運転見合わせや間引きが行われた。だから「計画停電のためダイヤを変更しています」は正しい表現だった。
ところが通勤中にこれを見聞きした小売業やサービス業の方々が、何を勘違いしたのか「計画停電のため節電しています」とやってこれが広まった。