「女性専用車両」はルールではないそうだ。

2007年11月6日の書き込みに、コメントをいただいた。

男性が乗車できない。とする根拠はどこにもありません。
守られないルールとして、女性専用車両をあげるのは、誤解に基づいた誤りです。
ただちに撤回されたほうがよろしいかと思います。

報道でも広報でもないのに、撤回を勧められるのは穏やかではない。
 勝手に想像すれば、コメントされた方が、女性専用車両に否定的なのかもしれないがそれはよくわからない。ただし、女性専用車両ではなくて、いかのような例であればこのようなコメントをいただくことはなかったろうと思う。

  • ラッシュ時には、乗車位置の前で3列で並ぶのがルールです。
  • 自動改札では、たとえ有効な乗車券を持っていたとしても、確実に機械に読み取らせるようにしなければなりません。そのため、横並びで通ったり、追い越したりしてはいけません。
  • この通路は左側通行です。

 女性専用車両については、窓に貼られたシールや、構内放送、車内放送によれば、要請があるのは事実であろう。ただそれがルールかどうか・・・これが論点なのだろうか。
 ルールは、“must or must not”・・・「しなければならない」とか「してはならない」というstatementであると英英辞典にはあった。強制性というのがルールに備わる性質として重要なようだ。そういう意味では厳密に言うとルールではない。一部の方を除いて男性お断りなのはあくまでも「お願い」なのだから。
 「緩やかな決まり」と書けばよかったのだろうか。しかし例えば「慣習」(custom)という言葉を使うと、「長年の」「昔からの」というニュアンスがついて回るし、しっくりくる言葉がない。それをルールという言葉に置き換えてしまったと受け止められたのだとしたら、言葉の使い方を間違えたのかもしれない。
 ただ、厳密に決まっているような印象のある法律で決まっていても強制ではないものはいくらでもある。たとえば「努力義務」を定めた規定は、特定の利害関係者にmust or must notを強いるものではない。
 ルールという言葉の意義は大変広くなってしまっていて、その最大公約数をとれば「守らせようとする人がいる事柄*1」ということでしかない。男性差別として不愉快に思う人が守る守らないはともかく、鉄道会社は乗客に要請し、職員に対してアナウンスすることを指示しているということでこれは広い意味ではルールなのだろうと思う。
 たぶん、コメントをいただいた方が考えるルールというのは、英語で言うとregulationのことなのだろうと思う。公式で、公式というからには公共性(みんなのためである性格)もあって、明文化されていて、慣習ではなくて、強制性が強くて、単なるお願いではなく取り締りまで行う立場の人がいたりもして、時には罰則もある。確かに女性しか乗ってはいけませんというのはregulationではない。しかしわたしはそこまで厳密には言っていない。
 ルールは、本当に強制かどうかはともかく、自分や自分の周りの社会を縛るものとして受け止められる。ルールを聞かない人、ルールを無視する人、いろいろいるが、いい意味でも悪い意味でも一定の緊張を与える。わたしが言いたかったのはルールの存在を際立たせておいて、効果がないのに、ただストレスだけを振りまいているルールはどうかなと思った次第である。
 ただ、女性専用車両の費用対効果がどうなのかは正直よくわからない。その意味で例示としては不適切であった。

 この書き込みをしていて、生徒を縛る校則のことを思い出した。スカート丈は守らなければならない? 学帽をかぶらなければならない? どうしてそんなようなことを強制するのか? 法律的に強制なのか? そんなルールは認められるのか? ・・・校則の理不尽さで悩むのは自由だし、生徒のためになっているかどうかは議論の余地があるし、正しいか正しくないかを考えるのも結構だが、生徒が認めるかどうかはともかく、学校や先生方が必要とし、守らせようとした時点で、ルールとしては成立していると言える。

*1:形骸化されたルールというのもあるから、守らせようとする人がいる「建前になっている」も含むのか