三権分立

 報道によると、2006年3月14日、東京地方裁判所は、読売新聞記者の取材源秘匿を理由とした法廷証言拒否を認めないとする決定をしたそうである。
 秘匿した取材源が公務員であり、公務員は守秘義務違反を犯したから、取材源を保護する必要がないそうだ。
 記者は法廷の意向に沿わなかったことになるわけだから、法廷を侮辱したこと対する報復のようにも見えるが、それはまあいいとする。判決の整合性は取れている。asahi.comの記事は

国家公務員法などに違反する可能性があることを重視。こうした情報の場合は取材源の秘匿の実質的根拠とされる「知る権利」を一般市民は持たないという異例の見解を示し、(以下略)

としているが、異例かどうかはわたしにはよくわからない。
 わたしが気になるのは、第四権力であるマスコミの行動を制限し、国民の知る権利を制限する裁判所は、国家権力の社会正義を維持するためにどれだけ努力をしているのかということだ。
 行政組織が腐敗したとしても、公務員はマスコミへのリークすら怖くてできないことになる。そのとき、裁判所が組織の腐敗を告発しようとする者を保護してくれるのだろうか。
 三権分立と言いながら、国家権力を役所が握っていることは暗黙の了解である。そんな中で、法廷の威厳と国家公務員法*1の実効性を守ろうとしたつもりが、結果的にはお役所を牽制するどころか、逆にお役所が腐敗するのを手伝っただけのように見える。
 警察による被害者実名公表拒否もそうだが、報道マスコミは力を失っている。知る権利がこれほど根拠として頼りないなら、新たな根拠を見いださなければならないのではないか。今後「知る権利はこの場合は制限される」という判断が乱発したら、あらゆるものが闇の中になってしまう。

マスコミは、十分に対策を練ってもらいたい。

*1:守秘義務を規定している