電車の中吊り広告を見た。N●VAが、自分たちのことを「学校」ではないと言っている。
- N●VAは、単語や文法の丸暗記をもう一度やり直すための“学校”ではなく、ネイティヴスピーカーの外国人講師と会話のキャッチボールを楽しみながら実践的な会話練習を行う、会話の“トレーニングスクール”です。
日本人にとっては何も戸惑いなく読める文書だが、あえて修飾語を抜いて要約すれば「われわれは学校ではなくスクールだ」と言っているわけである。
日本語学習者からは「学校にはschoolと異なる訳し方があるのか」と聞かれそうである。それに対する回答を考えてみる。(ただし、外国人向けにやさしい日本語を使ったりはしない)
学校とschoolは同じ意味である。ただし日本語によくある「否定の言い換え」現象が起こっているのである。
日本人の英語学習者も、同じ意味の言葉に同じ単語を繰り返し使わずに別の言葉への言い換えが行われているのを見て戸惑うことがある。勉強すればそれがセンスある書き方であることを理解できる。受験英語ではしばし得点源になったりする。
日本文の場合は、あまり言い換えは行わないが、「Aと似ているが、Aとは言わずA'と言いたい」と主張したい場合は、Aには日本語、A'には外国語(主に英語)を用いて言い換える風習がある。主に広告文、告知文に多く見られる。
- これはもう、果物というより、トロピカル・フルーツだね。
- 今までの雑誌の概念を超えた、マルチメディア・マガジンの創刊です。
- レガシーな汎用機を、サーバーに置き換える*1。
- これまでの公民館にかわって、コミュニティー・センターを500m先に開設しました。
ただし、日本的なものに対しては、言い換えは行わない。
- 普通のお米よりも手間が少ない無洗米をお勧めします。
客観的に読めば、あまりセンスのある表現だとは思えない。母国語の単語を古いもの、外国語の単語を新しいものとして使うのがかっこいい表現なのだろうか。
日本語の学習者や外国人の人口比率が今よりも増えれば、「わかりにくい」とされてやがて絶滅する用法である。未来の言語学者は
21世紀の日本人は、英語への置き換えが好きだった
と評価することであろう。
*1:サーバーの用途も汎用なんですが