MSゴシック

 Microsoft Word 97にHTML編集機能がついたとき、ワープロソフトでもWebページが作れることに興味を持ったが、生成されたHTMLファイルを見たらファイルがとても大きいことに驚いた。同じファイルをエディターで開いたら、<font>エレメントがたくさん散りばめられていて、その中に「"MS ゴシック"」と全角で書かれていた。ひどいと、本文よりもMSゴシックの文字数の方が多かったりする。ワープロソフトのプレビュー画面で見たままのデザインに仕上がるとの誘い文句で、編集者が気づかないうちにソースに自社のフォント名を入れるあたりはうまかったが、入れすぎだ。当然Windows以外を使うコンピューター・ユーザーから反発があったが、何より当時はブロードバンドがなかったのでWindows利用者にとってもダウンロードが遅くなるという明らかな欠点があり、普及しなかった。その後、HTMLは文書中心から、<table>エレメントを用いた整形や画像の濫用がはやるが、エディターベースのHTML制作が成熟しなかったのが原因だ。
 一方でMicrosoftはその後、Netscape、Lotus Super Officeあるいは一太郎を駆逐するのに夢中になり、フォントはあまり重要事項ではなくなったようだ*1が、実はMSゴシックはWindows系アプリケーションに深く浸透している。
 Windows 95の頃は、MS明朝を使ったアプリケーションも少なくなかったが、最近ではMS UI GOTHICもできたのに、あまり活用されていない。日本語版WindowsのソフトではMS PゴシックまたはMSゴシックが前提になっているものが少なくない。
 LinuxディストリビューションでもMSゴシックに類似したフォントが使われているように、MSゴシックは日本のパソコンに深く浸透している。ただし、画面や画面解像度が大きくなった今では、初期設定の小さいフォントサイズでは見えにくく、画面上では時代遅れのフォントのような気がする。現に、売り場で見るとMacの画面フォントの方がはるかにきれいである。
 そこで、Windowsでも画面フォントを格好良くしたくて、とりあえずコントロールパネルでシステムフォントを変えてみたら、フォントが切り替わらないものがある。どうもプログラムがMS P ゴシック/MSゴシックを直接指定しているようである。また、フォントが変わると画面が崩れるソフトウェアもいくつかある。
 ソフトウェアに加えてWebページもひどい。日本語文でゴシック体を使いたいならば"sans-serif"と指定すればいいのに、どうもMSゴシックやMS明朝としている場合が多いようである。
 MSフォントが永遠に使われていると思っているのだろうか。プログラマーがよく考えないで前提を作ると、また西暦2000年問題みたいなことが起こる。MSフォントが標準のフォントではなくなったとき、使えなくなるソフトウェアが大量に出るおそれがある。Microsoftは、ある日突然、現行MSフォントのサポートをやめてOS乗り換え促進の言い訳に使うだろう。そのとき対抗馬として有力なOSがなければ再びWindowsは売れるだろうが、利用者は大混乱である。

*1:Wordでも最初はMS Office特有情報は削除することをユーザーに告知する