原発再開是非の議論を進めよう

推進派と反対派の議論は平行線で、新たな理由を一つずつ増やすことには夢中だが、お互いの主張に真っ向から答えない。
代わりに、それぞれの立場で答えを用意してみることにした。

いずれにしろどこかに作らなければならないのだから、福島第一原発の敷地内か離島を開発するしかなかろう。離島には安全保障上のリスクはあるが、廃棄物の盗難事件はこれまで起こっていない。防衛が必要なら電力会社が自衛隊駐屯コストを負担するしかない。

  • <反対派>原発の事故を再び起こすことは倫理的に許されない

それは確かであるが、停電により命を脅かされる在宅治療者を放置することも倫理的に許されない。家庭・病院向けのライフライン確保を優先し、事業所や工場は受給調整契約にするしかなかろう。

  • <反対派>原発のコストは全体的には高くなる

その通りである。原発の恩恵を受ける人たちから高い電気料金を取る仕組みにする。

  • <反対派>原発運営にガバナンスが効いていない

国が設備を借り入れて運営するしかなかろう。国が作って民間に払い下げもしくは委託という形はよくあるが、逆がいけないという理由はない。電力会社の資本に公的資金を入れるのもいいが、国が賃借料を払うこととする。

  • <反対派>埋蔵電力があり、受給は逼迫しない

電力会社の予測ほどではないが、昨年ほどの節電マインドがあるとは思えない。

  • <反対派>免震重要棟がなければ事故発生時の対応ができない

これには回答がないだろう。さすがに、廃炉にしない限りは免震重要棟は用意すべきではないかとわたしは思う。

  • <賛成派>火力依存は安全保障を脅かす

まずはこの夏の短期を考えるべきで、今すぐ脅かされる状況にはない。

  • <賛成派>複数の電源を持つことが安定供給には欠かせない

わたしもそう思う。ただ、原子力がベースという考え方には根拠がない。猛暑の時期だけのバックアップにすればいい。

太陽光パネルの実質無償配布を公約にした黒岩神奈川県知事もトーンダウン。効率が悪いということは認めるしかない。ただし、真夏晴天時のピークカットには有効かもしれない。

  • <賛成派>化石燃料依存は自然環境を悪化させる

温暖化議論はもう終わりにしてもよいのではないか。二酸化炭素が温暖化の原因になるという根拠がない。それよりも、何も対策していないのに新たな地震で事故が起こらないという根拠がない方が問題である。

市場原理に任せる

原子力が生んだ電気は使いたくない人がいる一方で、安定供給を期待する人もいる。事実、関西電力地域では、受給調整契約は減っているようだからその中には原発を望んでいる人もいるかもしれない。
そこで原則は家庭も企業も受給調整契約にする。安定供給を望む人に対しては「受給逼迫時には原発から供給を受ける」という安定供給契約を結ぶ。その費用算定は以下の料金をすべて盛り込む。これは総括方式でも何でもいいから、健康保険外の自由診療のように好きなだけ上乗せしてかまわない。ただし、受給調整契約者への転嫁は禁止する。

  • 原発運営のための変動費
  • 事故防止のための安全対策費用
  • 絶対的反対派の移住費用
  • 地元協力金費用(地元説得費用)
  • 放射性物質最終処理費用
  • 福島第一原発の賠償費用
  • 将来の事故発生に備えた保険費用
  • 原子力政策関連天下り団体運営費用 (国庫補助は廃止)

安定供給が命にかかわる人と病院だけ、上乗せ費用を公的補助する。公的補助ができないなら電力会社が広く取って対象者に還元する。他の安定供給契約者から追加徴収するのが望ましいが、制度を決めるのは国、すなわち国民の総意ということになるから、ユニバーサルサービスのように広く国民から取ることも仕方がないかもしれない。さらに、逼迫時の蓄電力の確保や技術開発に必要な費用に充当するための税も課したいところだが、蓄電力の推進は国民全体の利益になることだから国民全体で負担すべきかもしれない。蓄電力の効率化が進めば自然エネルギーも普及するだろう。
上乗せ費用はこれまでの電気料金の数倍になるかもしれない。

真夏の数時間が使えなくて困る人は電気料金が数倍になる

ということだ。数ヶ月前までの契約すれば月単位で変更可能としておけば、真夏だけは数万円多く払って受け入れる家庭も出てくるかもしれない。
ただし、日本の電力業界には「値上げは権利」と主張する会社もあるから、今度は停電も権利だと言いかねない。そこで、受給調整契約であっても、計画停電した際は受給調整契約者の基本料金を無料、最低でも日割り精算する。1分以上停電させたら、1日分基本料金を差し引く。さらに停電の迷惑料も払わせることとし、供給維持へのインセンティブは確保する。
電力会社は、原発に燃料があるうちは保険費用を払い続け、稼働させたらさらに割り増しの保険費用を払う。特別会計は廃止して、代わりに電力会社が地元協力金を定期的に払う。
これでも需要者と供給者双方が望むのであれば、稼働すればよい。自然環境に無害の科学技術というのはほとんどないから、原発だけ差別しても仕方がない。
供給側はあっさり断念するかもしれない。採算が取れないと判断した電力会社が廃炉にすると言い出して、国が困るというのであればそのときに国有化を考えればよい。電力会社が原発を動かしたいと言っている段階で国有化の議論は始めるべきではない。ただし国にも維持する体力がなければ廃炉となる。
廃炉によって困るのは地元経済界である。地方航空路線の搭乗率保証のように、原発の地元が雇用確保を望むのであれば、地元協力金を受け取りつつも、各家庭や関係団体は安定供給契約を結び、電力会社が原発維持を断念しないための支出を惜しまないだろう。大飯原発で広域の被害地元と、潤う地元とで意見が割れている。地元協力金は広域の被害地元に払われる。安定供給契約を結ぶのは潤う地元が払う。
賛成派に倫理を、反対派に安全保障やベストミックスを語っても聞く耳を持たないのであるから、

わかりやすくお金に換算するのがよい

それしかない。