意表をつく政党が勝つ

 2021年の衆議院選挙で、野党共闘が不発に終わる中、維新と国民民主党が躍進。

 どの党も「え、そんなこと言っちゃうの?」という意外性のアピールしていたのが印象的で、「いつも愛想のない彼が突然優しくしてきて」と中学生の恋愛みたいなことをしていた。

 立民の1,000万円以下所得税免除は意味不明だったが、いい意味で意外さを発揮できた政党が党勢を維持することに成功している。

 自民は岸田さんの聞く力により、宏池会高市政策を丸呑みしたことが過半数割れを防ぐ要因につながったのではないか。「高市=右翼」のレッテル貼りも最近落ち着いてきたように見える。ただし、政策よりもYouTubeで「今回は若い世代の反応が多かった」と言っているのが印象的で、意外と利益誘導団体だけに支持されているわけではないことをアピールしたがっているようにも見えた。本当に若い世代が政治に関心を示しているかどうかは、今後、選挙管理委員会から世代別投票率が発表されるので検証可能ではあるが、街頭演説における左翼政党の聴衆はお年寄りが多いので、若い世代をつかめているのであればそれは保守勢力が支持を集めているという仮説が成り立つ。

 維新はニコニコが放映した各党政策立案者のプレゼンが印象的だった。トップバッターで現れた音喜多政調会長がYouTuberで鍛えたなめらかトークの中で、保守改革混合路線を打ち出し、橋本、親中のイメージを覆い隠すことに成功していたことが大きい。維新の政策が「とにかく都構想のために法律を通す」というところから国政政党としてメニューを揃えてきたことは注目したい。

 NHKですら、アナウンサーの不倫を連呼する政権放送から一転して、まじめ路線への転換を図り、保守的な政策を掲げたことも驚きだった。ただ、選挙制度上、衆議院議席の獲得が難しいというのは立花党首の事前の分析通りで、議席が期待できないことで死に票になることを嫌った有権者から比例代表の票を集めることもできなかった。

 国民民主は、前述のニコニコのプレゼンでは大塚さんが「玉木さんじゃないの」という視聴者の書き込みを紹介。よくわかっているじゃないの。そして掲げた政策がいきなりコロナ。これについては、それじゃない感がした。

 玉木代表がたまきチャンネルで普段から主張しているのは経済政策。財務省出身代表が、財務省の意向に逆らうところに価値がある。当選後のお礼動画でも経済政策について評価する有権者からの声を紹介していたが、民主党の片割れというイメージを一新させているところが大きい。玉木さんがいなければ泡沫政党へ転落する可能性もあったのではないか。

 れいわは、弱者ビジネスと揶揄されながらも、選んだ政策手段はリフレというところが斬新である。左翼は大企業増税と防衛費削減というのが定番だったが、国債を刷っていいんですと言い出したところが新しい。ところがマスコミは「富裕層に増税するんですか」「放漫財政でいいんですか」と古い発想から抜けきれない。第4権力よりもネットに軸足を映したのは正解であるし、テレビが取り上げなければそれしかやりようがなかったのだろう。

 たまきチャンネルにしても音喜多さんにしても山本太郎さんにしても、YouTubeを活用している議員が増えている。成功している議員は、地道にこつこつ意外性を語るということを続けている。「私は地元が大好きです。お祭りにも行きます」というような街頭演説と同じようなことしか言わない動画は微妙である。そのときはいいかもしれないが、それを毎回言うのだろうか。頻度を上げてこつこつ言い続けるならば、党に染み付いた悪いイメージを払拭する意外な政策。これ一択だと思う。