広告枠もがらがら

 首都圏の通勤電車は、自粛によって乗る人も減っているが、車内広告の数も急速に減っている。
 広告がディスプレイだけの電車として日本初登場となったJR山手線E235系。網棚付近にディスプレイを並べる斬新なレイアウトとしたが、週刊誌の中吊り広告が出せない、ということで一部紙が残ったと記憶している。ところが、地下鉄などの各線に広告ディスプレイ搭載車がデビューすると、いよいよ紙広告なしの電車も登場してきた。
 広告需要が高いのであれば掲載しろという圧力が営業から出て車輛設計部が屈するかもしれないが、今や都心を走る電車でさえ鉄道会社の広告ばかりというものがある。最近はそれもネタが尽きて、地方ローカル線のように何も差し込んでいない車輛も見かける。広告を取り換える仕事がこの世からなくなりかねない。
 通勤客も少ないが、その通勤客も自分のスマホ画面しか見ていなくて、紙の広告効果はかなり薄れる。紙は目の前にあると読みやすいのだが、網棚付近や中吊りは上の方にあって視線に入ってこない。この位置は、満員電車で身動きが取れなくなって、仕方がなく上を向くとようやく視線に入ってくる。ただ、すいている電車で週刊誌の中吊り広告で見出しを確認していると、こっぱずかしくなってくる。
 動画広告は興味を引くけれど、制作費と広告料が紙よりも高そうで、恐慌の時代には営業に苦戦しそうだと心配になる。
 ドア横のスペースにディスプレイをはめるなど、置く場所をもう少し図々しくしないと難しいと思う。東京地下鉄銀座線の新型車両で採用されている。
 相互直通運転がさらに広がっている。電車の遠征範囲が広くなる。埼玉県のお店が広告を出しても、神奈川県と東京都を往復してばかり、ということがありうる。広域に知名度を売りたい会社はいいが、そういう企業はWeb広告の方が向いているだろう。誰にとって使い勝手のよい広告媒体なのか、広告主に訴求しにくい。こんなところでもWITHコロナ、というか、WITHスマホが問われている。