中長期の影響

 コロナウィルス騒ぎに対する経済対策は、今のところピンポイントでしか実現できていなくて、第三次産業のうち、B to Cのサービス産業は生活必需品を除いて見殺しという状態である。
 東日本大震災のときもそうではあったが、地域限定であり、首都圏は一部地域に限られていた。今回は全国一律で、大都市の市場がダメージを受けている。人口がたくさんいるから店を開いておけば採算が合うというビジネスモデルが成り立たない。東京全域が被害を受けた歴史はアメリカ軍の空襲にまで遡る。そのときは復興需要があったが、今はリアルな市場からバーチャル市場への急激な移行を促すだろうから、例えば飲み屋街が壊滅的なダメージを受けたあとにただちに復活するシナリオは考えられない。なぜなら、戦後の復旧は人口が増加し、お年寄りは子供の世話を受けていればよかった。しかし、今の旧来のビジネスモデルを支えているのは高齢者自身である。子どもは別の職についていて跡を継ぐという考え方はないだろう。
 不動産は店舗需要に加えて、オフィス需要や集客施設需要でさえも衰退している。満員電車に乗らなくてもいい、という感覚はコロナウィルスが収束しても簡単にはなくならないと思う。通勤電車は、いったんくせがつくと毎朝のように運行が止まる。悪いときはいろいろな原因で止まるものだが、恐慌といえばやはり人身事故がリスクである。テレワークが定着すれば、朝きちんと動くかわからない電車に乗って、わざわざ都心に通勤しようと思わなくなる。今でもオフィスビルやホテルが次々と建っているが、稼働するのだろうか。東京一極集中は転機を迎えているかもしれない。
 新しいビジネスはサーバーが稼ぐ。通販特需がある運送業でさえ、日本郵政がかんぽ不祥事も重なってリストラを考える状況に至っているし、長期的には配達は機械がやるものに変わることは確実なので、これから配達員に転職するのも現実的ではない。
 非正規雇用では都心に住む生活費を捻出できないから、都心への人口流入が止まるシナリオもありうるのではないかと思う。
 製造業はどうだろうか。生活必需品とパンデミック特需産業を除けば、恐慌の影響を受ける。2020年の冬にまずは中国からの輸入が止まっていたが、サプライチェーンは復旧するのだろうか。材料がないが製品受注も少ないのでなんとかなっているのが現状だと思われる。今後、修理用の保守部品の供給は大丈夫だろうか。近年は自治体が公園に乱造した遊具が老朽化して使用禁止になっている姿をよく見かけるが、それはお金がなくてそうなっている。これに新たな課題が出てくる。部品がなくて機械が使えないとお金があっても直せなくなるのだ。公園の遊具ならまだしも、重要インフラに影響がないことを期待したい。東日本大震災のときは工場全損の被害が長期にわたって影響を及ぼすことは少なかったが、今回は全国に波及したり、中国に移管済だったりしているので影響を見守りたい。
 お魚券やお肉券の批判を浴びた農業・水産業については、ひきこもり需要は続くので、ふるさと納税の仕組みを使えば延命できるのではないか。ただし他の産業に比べればの話で、高級品の需要は低迷するかもしれない。また、和食の輸出を目指していた人々が挫折してしまうとしたら、大きな損失だと思う。
 公共交通機関については、近年、大型投資が続いていたが、新規案件は一気に止まるだろう。羽田空港アクセスはいらなくなるかもしれない。新東名は造りきると思われるが、地方路線の4車線化や北海道新幹線延伸は止まるかもしれない。リニア新幹線は大丈夫だろうか。