うるさい

外国の同業者を来日させて日本のすばらしさを語らせるテレビ番組で、路線バスを取り上げていた。
自動放送に続けてワンマンバスの運転手が補足をすることを取り上げていたが、単なる過剰放送である。
この番組ではおもてなしや高品質サービスの理由を日本企業側が説明するのだが、その理由がひどい。

  • 自動放送に乗客は興味を持たない
  • 注意喚起については女声に続けて男性運転手が男声で呼びかける方が伝わる

自動放送を聞いてもらえないと思っているなら、そんなものは声優と電気の無駄遣いだからやめた方が良い。男声がいいなんて、女性運転手排除の論理である。声の太い女性しか採用しないということか。つぎゃーしゅーてぇーす(日本語訳:次は終点です)というようないつもやっている中途半端な運転手の声を録音して流せばいい。
本当の理由は、バスが揺れてけがをしたら抗議されるという事なかれ主義と、バスの運転手は勤務中黙りっぱなしでかわいそうだから声を出させてあげようということかもしれない。しかしバスは揺れるものであり、急ブレーキをかけたかどうかは機械で判定できる時代だから、運転が悪いと苦情が来たら記録を見せればいいだろう。また、声を出せない仕事なんて世の中にはいくらでもあり、運転手だけ特別に配慮する必要はない。声を出したいなら、指さし点呼を添えた声出し確認などをもっときちんとやったらどうか。
バスが止まるたびに「止まります」、発車するたびに「発車します、ご注意ください」と言われるのはとてもお節介である。それならATMで引き落としたら「使いすぎないように」とか、お菓子売り場の前では「太りますよ」とか言ってくれないと釣り合わない。
本やスマホに気を取られて発車に気づかない人はもともと放送を聞いていない。だから

放送しても無駄である。

どうして乗車スタイルの変化に気づかないのか。
あと、もう少し頻度と長さを抑えられないだろうか。「発車します、おつかまりください」という自動放送があるが、どうしても発車しますを言いたいなら「発車します、次は○○に停車します」と言えば、その後に続く「ピンポンパンポーン、次は○○、○○でございます。」を省略できる*1。「お降りの方はお知らせ下さい」って、ワンマンバス導入時には必要だったかもしれないけれど、もうそろそろ御指導いただかなくても運転手に知らせなければいけないことはわかっていると思うから、わざわざ言わなくてもいい。運転手によって次回停車停留所のアナウンスのタイミングが異なるが、停車中のエンジンが静かなときに放送してもらえれば音量も下げられるだろう。

運転手がうるさくても、そのうち自動運転になれば解決するという可能性もある。ただし、省力化をしようとすると、労働者側はアピールしがちである。過剰放送はそのひとつであり、過干渉をおもてなしだと当人たちは思っている。
その過干渉の状態を当たり前と思った設計者がそのまま機械化してしまうと、もれなく取り込んでくれるだろう。
例えば「ご乗車ありがとうございます」と自動放送で流すが、もし感謝を伝えたいならば、放送ではなくて、運賃を払ってくれるときにひとりひとりに肉声で言うべきなのではないかと思う。自動放送の原稿を書いた人はすべてを盛り込むことをよしとしているから、ご乗車ありがとうございますも当然含めなければいけないと思っている。
バイリンガルやろうあ者対応をすべて盛り込むと、そのうちディスプレイや光や音が入り交じって、車内は繁華街のようになってしまうかもしれない。現に山手線の新型車輌では紙の広告を廃止して壁面をすべて動画にしようとした。
過干渉を必要とする一部乗客には、デバイスを貸し出すか、手持ちのデバイスで情報提供するようにしたらいい。今車内で最も必要とされているのは、誤乗確認と運賃情報であるが、それらはなぜか提供されない。でも乗った停留所からの運賃情報をリアルタイムで出すくらい今の技術でできるのではないか。代わりに、車内の全員向け放送は緊急時だけにしてほしい。基本的に放っておいてほしい。

うるさい。

*1:JRの首都圏の自動放送で、「今度の1番線の電車は○時、○分発、○○行きです」と言った1分以内に「まもなく、1番線に○○行きが、参ります」と繰り返すのは何のためだろうか。これも1回にまとめて静かにしてくれないだろうか