孫社長

SoftBankが非効率かつ不安定な発電手段である自然エネルギー事業に参入した。これはNTTとの戦いを教訓に規制産業を立ち上げて先行者利益を得るための陰謀であり、寄付した100億円はすぐ取り返せると噂する人がいる。
そんなに儲かるなら他の人も参入すればいいと孫社長は言うが、もしかしたら孫さんだけが儲かるのかもしれない。
もしそうだからといって批判の対象にするのはおかしい。

儲けてもらえばいいではないか。

震災復興では新しい産業を起こして経済を立て直さなければいけないと誰もが知っている。多額の義捐金は配られていないし配られても当面の経済援助にしかならない。むしろ、義捐金可処分所得を下げて消費を冷やし、税収までも痛めている可能性が高い。ではどうやって経済を動かすのか。

  • 国が動くのを待つ
  • 外国資本参入を待つ
  • 自給自足する

このような選択肢がいいのだろうか。他の選択肢はないか。SoftBankがやってきて儲けてもらえばそれでいいではないか。お金が動けば経済が発展する。
わたしは自然エネルギーが30%のシェアを得るとは思えないので、価格が高いから採用しないということではなく、多少はポートフォリオの中に取り込んでおけばいいと思う。そして、不安定な自然エネルギーが送電網に乗ったときに安定供給する技術を日本は磨かなければならないと思っている。核燃料サイクルもんじゅに投資するくらいならば、スマート送電網に投資した方がましである。
ただし、誰も投資してくれない。銀行は国債にしか投資してくれない。それなら孫さんに投資してくれればいいではないか。こんなにありがたい話はない。その結果儲けたからと言って文句はない。リスクを取ったのだからリターンを得る権利はある。資産家が投資をしたら批判される国というのはおかしい。資産家は目立たぬように贅沢だけしていろ、もしくは税金払えというのでは誰も日本に残りたがらない。
買い取り制度によって守られているというが、資本主義なのだから誰かが利権を持つのは仕方がないことである。問題は利権が固定化すること。新たな支配者が新しい産業で次々現れれば、利権による固定化は防げる。ここ数年は利権を謳歌してもらえばいいではないか。ただし、固定価格制度はいつなくなるかわからない。また、携帯電話事業は契約者数や、契約者ひとり当たりの単価で競うのに対して、自然エネルギー事業では技術革新を通じた発電効率競争、コスト競争、供給安定化競争に勝たなければならない。通信業界ではマーケティングで勝利したが、技術で勝負できるかが試される。

KTテレコムとの提携

安い電気を韓国で買って、大量の電気を必要とするITサービスを日本から移転するという陰謀説も読んだ。携帯電話に比べれば今のデータセンター事業は小さい。データセンター事業が伸びれば経営のポートフォリオが安定することは確かである。物語としてはおもしろい。ただ、データセンターのライバルはたくさんいる。そもそもデータセンターコストの中で電気料金の占める割合は少なくはないが、1割台だと思う。100億円寄付してまで画策するようなことではないと思われる。韓国との提携はあくまでもリスク分散提案のひとつと捉えていい。ソーラーとは関係ない。

自然エネルギーを試そうともしない日本を想像してみる。

原発賛成反対を永遠に議論し、議論するだけで何も変わらない。電気料金は資源不足で値上がりし続けることが確定。原子力のごみも国内で抱えきれなくなり、とりあえず福島第一原発の敷地に搬送。
孫さんをたたいている場合ではないと思う。