日本経済新聞に物申す

日経TEST例題

 「日経経済知力テスト」(略して日経TEST)を2008年に開始するにあたり、日経は公式Webサイトに例題を載せている。その第2問*1

下の組合せのうち、AとBの対応関係が他の3つと異なるものはどれか。
1. A:カミソリ B:替え刃
2. A:プリンター B:トナー
3. A:パソコン B:保守サービス
4. A:携帯電話機 B:通話

価格競争が激化した中で、本体価格を下げてビジネスをしている企業がどこで利益をあげているかの理解度を試す問題らしい。模範解答は3だという。
 パソコンメーカーは「有償の」保守サービスを提供している。法人向けが主流だが個人向けサービスもある。NECなどの国内大手メーカーが全国に拠点を抱えているのは保守員(サービスマン)がすぐに駆けつけられるようにするためであるし、全国網を持たない後発メーカーや外資系も宅配便を活用した修理サービスを用意している。量販店もまた、個人向けに保証サービスを提供している。無償保証、修理の技術料、保守部品の長期保管は儲からないが、保証の延長や出張サービスの名目で受け取るサービス料は、定額の定期払い、あるいは前払いになっていて、売上単価の向上に貢献している。これが利益の源泉になっていることは経済知力を高めたい人にとって覚えておいたほうがいいことだと思う。
 一方、携帯電話は、ソフトバンクホワイトプランに代表されるように定額制の導入で今では利益の源泉になっているか怪しくなっている。通信パケットの増加が一人当たりの月額料金を下支えしているが、これも定額制導入で弱含みの展開だ。また、ビジネスモデルは変更され、本体価格の値下げをやめて分割払いにする動きは大手3社いずれも同調している。旧来の料金プランで、高い通話料金を払っている人も多くいるが、こういう白黒はっきりしない選択肢は試験問題にふさわしくない。ドル箱だった通話料収入が今では利益の源泉かどうか怪しいということは、やはり経済知力を高めたい人にとって覚えておいたほうがいいことだと思う。
 わたしが出した答えは、3ではなくて4だ。

この例題を見て、受験はやめた。

2008年6月11日社説

 北海道で、1時間始業・終業を早める試行が概ね好意的に受け入れられているそうだ。そこで、時計を進める本格的なサマータイムを北海道限定で導入しようというびっくり提言が、あろうことか社説に載っていた。
 コンピューターシステムの調整の手間を問題にする声があることは書かれているのでご理解されているようである。では、なんで全国一律導入よりもさらにコンピューターシステムの調整が大変な1国2制度を導入しようというのか。
 コンピューターは世界中で使うものであり、サマータイム導入国に持っていったら使えないことがあっては困るので、今でもサマータイム制度が導入されれば設定可能なようにはなっている。ただし、残念ながら東京と北海道で時差を設けるという要求にこたえるようにはなっていない。Windowsの場合は、たぶんマイクロソフトから送られるであろう修正プログラムを適用すれば、「自動的に夏時間を調整する」という設定*2が使えるようになると思う。

ただ、日本のタイムゾーンは、

(GMT+09:00) 大阪、札幌、東京*3

となっている。タイムゾーンを分けなければならない。今のプログラムではコンピューターが北海道にあるかどうか自動的に検知できないから、利用者が手動でタイムゾーンの設定を行わなければならない。こういうことがあらゆるコンピューターで発生する。
 それでも、恒久的に北海道だけ導入というのであれば、変更してもよいだろう*4。ただ、この社説は試しにやってみようというのである。暫定的に変えるとなったらその変更費用を誰が負担してくれるのか。
 北海道の人も他地方の時計を利用して生活していることを忘れてはならない。また、他地方の人も北海道の時計に影響を受ける。人間は、今は否定的な人でもやがて慣れるだろう。北海道の試行で1時間早く生活している人にとっては、全国ニュースが1時間遅くなるのは慣れてきたことだろう。でも、八戸を出て札幌に到着する電車のダイヤの管理*5は慣れでは済まされない。馬券の投票締め切りは1時間早くなる。福島から送信されている電波を受信した道内の電波時計はどうなるのだろうか。コンピューターはすべて改修が必要になるのである。たとえ、試しであってもだ。
 そして、ビジネスをしている人たちはあらゆる規則を見直さなければならない。また、これまで誰も気にしなかったことも企業から消費者へ説明してもらう必要がでてくる。たとえば、東京から札幌にかけた電話を札幌で着信者負担にしたら、何時の着信として記録されるのか。夜間割引の適用などで気になるところだ。全国の金融機関のATMには「北海道内の金融機関をご利用の方へ」という紙が壁に貼られ、営業時間に関する注意書きが小さい字でびっちり書かれるようなことが予想される。これらは、システムが変わることもさることながら、システム稼動に関する情報を持っていない人間に混乱をもたらす。西暦2000年問題を思い出す。
 上記のような広範な影響があることを「暫定」でやってほしくない。騒ぎが予想できたから、暫定かつ地域導入した北海道は、時計をずらさず時間割を変えるという賢い手法を採用したのである。
 タスポが地方ごとに段階展開になったのは一斉導入よりも安く上げるためだろう。新しいITシステムの導入にはよく用いられる手法である。でも、サマータイムはすでにシステムが導入されている会社や店に変更が加わるため、余計な作業が加わる。
 サマータイム

  1. 北海道を特区として限定導入
  2. 特区を撤廃し、全国導入

という2段階にしたら、システム変更は2回入る。ガソリン暫定税率撤廃、後期高齢者医療制度*6に続く「朝令暮改」として大批判を浴びることだろう。
 札幌証券取引所東証よりも早く開く証取になるが、夏だけの話である。ボジョレー・ヌーボーを1秒でも早く飲みたい勢力を新千歳に集めようにも、季節が違う。どうせなら1年中1時間早い方がビジネスチャンスがあるかもしれない。わたしはサマータイムが導入されてもされなくてもいいけれど、

導入肯定論者は、一斉本運用を提案してほしい。

何でも段階導入すればいいというものではない。それに社説にあるように道民の意見だけで決めないでほしい。限定導入で困る人は全国にいるのだ。
 論説委員さんにとってのコンピューターシステムの調整というのは、コンピュータールームにいる人が、コンピューターの画面を開いて、NHKラジオかNTTの時報を聞きながら、時計あわせをすることなのだろう。

*1:http://ntest.nikkei.jp/example/question02.htmlhttp://ntest.nikkei.jp/example/result02.html

*2:現在でも、サマータイム導入国のタイムゾーンでは使える

*3:おそらく、アルファベット順ですね

*4:コンピューターは長く使えるものではないので、いずれは置き換える時がくる。制度導入時はその場しのぎの対応をして、コンピューターを入れ替えるときに適切なプログラムを使うようにすればいい

*5:寝台列車の発着時刻はどうなるのでしょうね。特に切り替え日は難しいでしょうな

*6:もし廃止されれば