過密が悪いのか?

 引き続き、4月25日尼崎で起こったJR宝塚線の事故について。悪いのは設備的、教育的安全対策が間違っていたことに尽きると思うのだが、テレビは競争や過密ダイヤ、ダイヤの遅れをなくそうとする姿勢*1まで悪いと言い出しているので、いかがなものかと思う。
 競争をあおっているのは、国鉄を民営化した国民*2だし、都会近郊に住みたがる住民である。乗客は、サービス向上によって輸送サービス提供元が引き受けざるをえない費用増大という問題を、値上げではなくて競争で解決することを望んでいる。
 過密ダイヤは怖いからと不便なダイヤに戻せば、事故は減るかわりに、鉄道会社は自らのサービスを向上しようとしなくなるし、毎日の通勤疲労が増大することで結局は利用客に負担を強いることになる。
 まじめに競争しないでサービスの質を落とすことばかり考える首都圏のやり方が正しいということになってしまう。
 朝のテレビのワイドショーはダイヤを批判するが、本数を減らせというのか。

出演者はタクシーや車でテレビ局に来ていて、満員電車には乗っていない*3

からそのようなことが言える。数十年に1回の事故で、大都市通勤のあり方まで根底から否定することはない。
 すべてがお金で解決するわけではないが、過密ダイヤであればそれにふさわしい安全投資をすればいいのである。また、ダイヤの遅れは日勤教育ではなくて、ターミナル駅の折り返し能力の強化や、人員増で対応すればいい*4

*1:安全を無視してまで優先してはならない、というなら正しいが、外国のように遅れてもいいではないか、ということになれば東京では殺人ラッシュが増えるのではないか

*2:政治が好んで用いる民間活力の導入という言葉を、競争原理の導入と同義にとらえる。鉄道事業は認可制であるし、年間予算を組んでいることから、民間活力=資金投下の柔軟性という教科書通りの考え方はこの業界ではあたらないだろう

*3:ただ、電車が走っていない時間帯にスタジオ入りしなければならないという事情は理解しているのでぜいたく批判をしているわけではない。

*4:運転手と車掌がちんたら端から端まで歩かないで、乗務員室前に次の乗員を待機させた上で、終点に着いたらすぐに乗務員を入れ替えて発車すればいい。そのためには、待機分の要員増が必要となるし、ダイヤが遅れた場合の予備車輌があればなおよい。